米軍北部訓練場の一部返還の条件とされる東村高江へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設問題は、防衛省が本裁判を提訴し、法廷の場で国と住民側が対(たい)峙(じ)することになった。政権交代に望みを託した住民側だが、政府側は、法解釈はどの政権下でも不変だとして粛々と司法手続きを進めることを選んだ。「基地負担軽減」に向かう道筋に対する双方の認識の溝は埋まらないままだ。(社会部・石川亮太、東京支社・西江昭吾)
「政府には一貫性がある。特に法律的事項は政権が代わったからといって、ひっくり返る性質ではない」
旧政権の手法を鳩山政権が受け継ぐことについて防衛省幹部は静かに語る。
地元住民の行為について、同省関係者は「住民側は『監視』と言うが、私たちは『妨害』と言ってきた。第三者の裁判所が2人は妨害と認めた。そこは民主党政権になろうと変わることはない」と強調する。
一方、ある幹部は、工事を性急に再開する考えはないとして「負担軽減を進めたいという思いは(住民側と)一緒だ。早く返還の取り組みを進めたいが、強制的にはしない」と指摘。2月1日の地元説明会では「こういう機会に丁寧に説明したい」と念を押した。
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「旧政権の許し難い政策をそのまま引き継いだ新政権に憤りを感じる」
住民側弁護団の金高望弁護士は国の提訴に怒りを込めた。在日米軍再編見直しを掲げた民主党中心の政権発足後、政治判断による仮処分申請の取り下げに期待し、国に文書で申し入れもしたが、手続きは「淡々」と進められた。
昨年12月に那覇地裁が住民2人に通行妨害禁止の仮処分命令を出したことを受け、対応を協議した住民と弁護団は、いくつかある対抗手段から、国に提訴を求める「起訴命令申し立て」を選んだ。国が期限内に提訴しなければ、仮処分命令が取り消される可能性にいちるの望みをかけた。
金高弁護士は、これまで国側が個別具体的な妨害行為を立証できていないと批判。「住民側は妨害行為をしていない。正当な表現活動だと訴える」と話した。
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琉球大学法科大学院の高良鉄美教授(憲法学)は「国は提訴ではなく、より住民らの権利を制限しない方法を検討したのかが見えてこない」と疑問視する。当初は8歳の子ども対象となっていた一連の司法手続きに、「権力を持つ側が人権救済の砦(とりで)の裁判所をゆがんだ形に利用している」と批判。施策に抗議する市民らに同様の手法を権力側が今後も続けてくることを懸念し、憲法で保障された「表現の自由」の形骸(けいがい)化を危惧(きぐ)した。