[所信表明演説(上)]「対等」を問い直すとき

2010年6月12日 09時55分

 期待するほど失望も大きい。それでもなお期待し続けるのは、現実の負担が放置できないほど大きいからだ。

 県民の期待は決して漠然とした期待などではない。もっと切実で、もっと切羽詰まったものである。「不平等・不公平の是正を求める異議申し立て」といった方が県民感情に近い。

 所信表明演説で菅直人首相は「沖縄の負担軽減に尽力する覚悟」だと語った。

 米軍普天間飛行場の県内移転を進める菅内閣の基本方針と沖縄の負担軽減とは真逆のベクトルにある。日米合意を前提にしながら、どういう形で負担軽減を進めていくのか。残念ながら、その道筋は示されなかった。

 沖縄が背負わされている「負担」をどう定義し、その「軽減」をどう具体化させるかが問われている。

 米軍が海外に駐留させている兵力総数は約23万人で、アジア太平洋方面とヨーロッパ方面にそれぞれ約10万人ずつ配置している。沖縄駐留は2万5500人で、米軍海外駐留兵力の10%、アジアでは実に4分の1が集中する。

 アジアの同盟5カ国(日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイ)の国土面積総計に比して沖縄はわずか0・025%という針の先ほどの県土しかない。これほど基地密度が高い「軍事の島」は世界のどこにもない。

 この「負担」を沖縄は戦後ずっと背負わされてきた。安保の恩恵を国民が等しく享受していることを思えば、圧倒的な負担の集中は差別としか言いようがない。

米軍普天間飛行場の県内移転を決めた日米共同声明への批判は、こうした負担の実態をないがしろにして、結局現状維持に逃げ込んだことに向けられる。

 政府内には共同声明に盛り込んだ「米軍と自衛隊との間の施設の共同使用の拡大」を検討することで、日米地位協定の改定につなげる、という主張がある。日本は基地管理の主導権を奪還できるのか。

 2006年の日米合意は、米空軍嘉手納飛行場での訓練を本土の自衛隊基地へ分散移転することで、「負担軽減」を図るとした。ところが、外来機の増加で騒音はむしろ増えている。

 米軍が「運用上必要だ」と言えば、日本政府は口をつぐむ。嘉手納周辺の安眠を妨げるジェット機の未明発進の必要性を検証するシステムがない。在日米軍に文民統制は及ばないし、改善しようという政治意思もなかった。

 今回の共同声明は米領グアムで建設する米軍基地に「思いやり予算」を回す糸口をつくってしまった。再生可能エネルギー技術を導入するための資金を駐留経費負担に盛り込むという。環境調査で基地内立ち入りを制度化する考えも共同声明に盛り込まれた。基地管理を米軍へ全権移譲している地位協定を書き換えて、日本側の権能を拡充する方がはるかに効力がある。

 民主党が公約した「対等」な日米関係を具現化するなら、少なくとも基地管理をすべて米軍に委ねる現状を変えることから着手すべきだ。

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