[稲嶺名護市長就任]政府は断念を明言せよ

2010年2月9日 09時35分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 名護市長選で当選した稲嶺進氏(64)が初登庁した。稲嶺氏は、職員へのあいさつで「名護市は、米軍普天間飛行場移設問題で全国区というありがたくない称号を受けてきたが、早く終止符を打ちたい」と、辺野古の海に新しい基地はつくらせないことをあらためて表明した。政府や県に移設反対の意思を直接伝える考えだ。

 移設反対を掲げて当選した稲嶺氏のバックには明確な民意がある。「使命と重責を担う緊張感で身が引き締まる思い」と決意を語った。鳩山由紀夫首相と、まだ辺野古移設反対を言明していない仲井真弘多知事は、もう辺野古移設は無理だということを認識すべきだ。

 移設先を探っている政府・与党でつくる沖縄基地問題検討委員会は5月末までに最終結論を出すとしているが、「ゼロベース」で検討するといい、辺野古をまだ候補地から排除していない。防衛省も環境影響評価(アセスメント)の手続きをストップしていない。米国もなお辺野古にこだわる姿勢を崩していない。

 稲嶺氏の登場で県内の潮目は完全に変わったといっていい。県政与党の自民は県外移設を求める意見書・決議案を2月定例会に提案する。同じ与党の公明も同様の考えで、全会一致を目指す。

 政府は万が一にでも、移設先を辺野古に戻すようなことがあってはならない。昨年8月に政権交代を果たした衆院選、そして名護市長選で示された辺野古移設反対の民意を自ら裏切ることになり、旧自公政権よりも悪い。民意をないがしろにして政治ができるはずがないからだ。

 名護市が抱えているのは移設問題だけでないことはいうまでもない。移設問題が浮上してからこの間、市には北部振興策や島田懇談会事業などで600億円以上が投下されたが、市民生活の向上につながらず、政府の基地政策が破綻(はたん)したことを意味する。

 市民の命にかかわる産科・婦人科・小児科医師の恒常的な不足、シャッター通りと呼ばれる中心市街地の衰退に歯止めがかからない。完全失業率は県平均を上回り、1人当たりの所得は北部圏平均をも下回る。空き店舗率は約2割、1000万円以上の負債を抱え倒産した建設業者は2000年から40件近い。

 稲嶺氏には移設問題を片付けたとしても、これらの難題が待ち受けている。順風満帆の船出といかないことは自身が一番知っているはずだ。

 稲嶺氏は職員に「変化に対応できる柔軟な発想や想像力」を求めた。「豊かな自然や歴史、文化の特徴を生かした独自の街づくり」を訴え、移設による振興策に依存しない方向性を示した。観光と農業を念頭に、従来の政策から大転換したといっていい。

 民意を尊重しない民主主義はあり得ない。政府は最終結論を出す前に沖縄県内は候補地から除外することを明言すべきだ。辺野古が移設先として浮上してから十数年間にわたって地域コミュニティーが移設反対派と賛成派に分断された。地域を修復・再生させることも重要な課題だ。

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