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2011年の県内経済は、東日本大震災後に観光客数が落ち込み、彼岸用キクが価格下落するなどの影響があったが、短期間にとどまった。8月には人口が140万人を突破し、人口・世帯数増加を背景に消費や住宅建設需要は底堅く推移。観光も持ち直しの動きにあり、来年以降、県内景気の回復の動きが続くとの期待もある。一方、海外市場を取り込むチャンスも見えてきた。中国人向け数次ビザの発給は順調に増え、海外からの新規就航や増便も相次いだ。酒類業界が海外出荷強化戦略を発表したほか、工場新設や販路拡大の動きもあり、新たな展開が見られた。県内経済のこの一年の動きを分野ごとに振り返る。
夏以降 順調な足取り
景気全般
県内景気は回復の足取りが着々と進んだ。観光は東日本大震災後、一時観光客数が落ち込んだが原発事故などの影響は少なく、夏場以降は比較的順調だった。
震災直後の円高や、欧州債務問題に起因する超円高も続いているが、輸出産業が少ない産業構造で大きなダメージを受けなかった。他方、内需型産業は良好で、特に小売りなどでは、既存店ベースでも売上高が前年を上回る月が多くあり、流通関係者は「節約志向が薄れ、質のいい商品では単価を上げられる雰囲気になった」との声も聞かれた。同時被災の可能性が低い沖縄が再評価され、本土企業がデータセンターを県内に移す動きがみられるなど、需要の取り込みにも一定程度成功した。
一方、企業倒産は低水準ながらも、資金繰り支援の政策があった前年に比べ増加傾向となった。貸し出し条件変更に応じる金融円滑化法は来年も延長される見込みだが、企業の再建可能性を重視する方向。中小、零細企業の実態は厳しい面もあり、来年以降、景気の回復傾向が続いても、倒産が増加する恐れは残る。
塩害で葉タバコ打撃
彼岸キク 震災で暴落
農林水産業
東日本大震災による彼岸用キクの価格暴落、度重なる台風被害、政府の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加表明など県内の農林水産業界は大きく揺れた。台風の接近が相次ぎ、農林水産業に多大な被害が出た。沖縄地方を通過した台風は7個。特に、5月の台風2号は塩害も影響し、被害額は70億6000万円に上り、過去最大となった。
収穫前の農作物の被害は深刻で葉タバコの生産量は前年を6割以上下回り、過去3番目の不作となった。県産夏野菜を代表するゴーヤーやオクラ、県産が高いシェアを占めるマンゴーなどが品薄となり、市場価格が上昇、県民生活にも響いた。今期のサトウキビ収穫量は台風の影響もあり、復帰後最低の65万トンと見込まれている。
一方、東日本大震災の影響で、彼岸用キクの県外需要が激減。市場価格が暴落し、県花卉(かき)園芸農業協同組合(太陽の花)とJAおきなわの両組合で年間売り上げの1割に当たる11億円の減収となった。
太陽の花は市場価格が生産費を下回り、採算が合わないとして3月27日から5日間、県外出荷を停止するなど対応に追われた。
11月には野田佳彦首相がTPPへの事実上の参加を表明した。県農林水産部は関税撤廃で、関連産業も含め1420億円の県内生産額が減少すると試算。JAなど農業団体を中心に県内でも反対運動が展開された。
金融や保険、知的財産など21分野(24作業グループ)と交渉対象が広範囲に及ぶため、反対の声は医療界や消費者団体にまで広がっている。
利息収入減り3行業績悪化
金融
企業資金需要の低迷や低金利が続く中、県内金融機関の業績は、本業を中心に悪化した。少ない資金需要を掘り起こすため、企業訪問の徹底や、海外展開の支援などサービス強化による顧客獲得に乗り出している。
貸出金利息収入の減少に加え、預金利息支払いも増え本業収益力は低下。2011年9月中間決算は琉球、沖縄、沖縄海邦ともコア業務純益が軒並み減少した。
一方、不良債権関係では、金融円滑化法などの政策効果もあり、処理額は前年同期に比べ減少した。
ただ、景気回復の足取りは遅く、企業の立て直しは進んでいない。収益環境が厳しい中、取引先への目利きを徹底し、処理方針を含め早期の対応が必要になりそうだ。
取引先の販路拡大を支援する商談会の実施など連携強化の動きも活発。琉球はアジア進出支援のため政策投資銀行と提携したほか、コザ信用金庫も本業回帰で沖縄市内の商店街の振興支援を始めた。
数次ビザ効果 直行便増
観光
県内観光は、東日本大震災の影響で旅行需要の低迷が続いたが、中国人観光客向けの数次ビザ発給や新規路線就航の効果で外国客の呼び込みに期待が高まった。
震災後2カ月の観光客数は前年同時期実績を約20%下回った。全国的な旅行自粛ムードも相まって主力の関東方面からの客足が激減。福島第1原子力発電所事故の影響で、外国客数も約20~40%落ち込んだ。さらに、かき入れ時の夏場の週末や連休に台風が相次いで接近し、回復の足取りを鈍らせた。一方、修学旅行の行き先を関東方面から沖縄に変更する振り替え需要が増し、1~12月の修学旅行の受け入れ実績は過去最多の2553校、45万616人に上った。
需要回復の起爆剤として注目されたのは、7月に始まった中国人観光客向けの数次ビザの発給だ。一定以上の経済力があり、最初の旅行で沖縄を訪問すれば、3年間は何度でも日本に入国できるため、中国からの誘客に期待が高まった。7~11月までの発給件数は7203件で前年同期の個人ビザ発給の約30倍に上った。
数次ビザの発給に呼応して中国からの直行便の新規就航や増便も相次いだ。7月には仲井真弘多知事が中国でトップセールスを展開。中国の海南航空が7月に那覇―北京線を開設し、中国国際航空も来年1月の開設を表明した。県は2011年度の中国からの観光客数目標を前年度実績の2倍となる5万人に設定。そのほか、アメリカのユナイテッド航空が9月に那覇―グアム線を開設、韓国のアシアナ航空が12月に那覇―ソウル線の毎日運航を始めた。
一方で、沖縄の空を取り巻く環境も激変した。格安運賃を売り物にスカイマーク(SKY)が9月、那覇―宮古線に参入。宮古線で競合する日本トランスオーシャン航空(JTA)はSKYが打ち出した最安値運賃2800円に対抗し、両社の価格競争が激化。
JTAはSKYや来年以降に参入が予定される格安航空会社(LCC)との競争に備えるため、13年度末までに36億円の経費削減を目指す大幅なコスト構造改革に乗り出した。
入荷減、一時品不足に
小売り・流通
県内小売・流通業は東日本大震災でサプライチェーン(部品の調達・供給網)が寸断されペットボトル容器やインスタント食品などの入荷が減少、一時的な品不足に陥った。飲料水は原発事故の影響で水道水の安全性に対する意識が高まり、県内から本土の家族や友人に送る人が増え品薄に。一方、夏場の節電対策の「スーパークールビズ」を追い風に、かりゆしウエアの県外出荷が急伸。縫製が追い付かないメーカーもあった。
百貨店・スーパーでは、デパート・リウボウが店舗の活性化でパレットくもじの店舗を一部改装し、4月にリニューアルオープン。金秀商事がホームセンター最大手のカインズとFC契約を締結し、県内2店舗を出店したほか、サンエーが東急ハンズとFC契約を締結し、来年夏に開業する「宜野湾コンベンションシティ(仮称)」に出店するなど、生き残りを掛けた事業展開が活発だった。
オリオンビールと県酒造組合連合会は2016年度をめどに、泡盛やビールの県外・海外出荷を拡大させる共同戦略を発表。本土企業との競争激化や県内消費の落ち込みへの対抗策として、経営基盤を強化する。
環境・再生エネに関心
企業動向
東日本大震災や原発事故を受け、電力安定供給や自然エネルギーへの関心が高まり、県内でも安全やエコを前面に打ち出す企業の動きが目立った。
沖縄電力は7月に社長直轄の防災室を設置。防災対策と災害復旧体制を強化した。再生可能エネルギーの導入も促進し、南大東村で可倒式風力発電設備2基の営業運転を始めた。本年度内に名護市で大規模太陽光発電設備も設置する計画だ。
環境に配慮した取り組みを観光の目玉にする動きも。県内のレンタカー会社3社は電気自動車(EV)220台を導入。コンビニの一部店舗や高速道路のサービスエリアでも充電サービスが始まった。
成長著しいアジア市場を取り込もうと、タイガー産業は11月、中国広西チワン族自治区に新工場を稼働させた。金属、プラスチック製品を中心に生産体制を拡充し、中国、東南アジアへの販売を強化する。コンクリート補修材製造・販売のケムテックは5月、台湾の購博有限公司と販売代理店契約を締結。台湾市場を足掛かりにアジア展開を目指す。