[原発安全評価]初めから結論ありきだ

2012年1月24日 09時24分

 審査を受ける者と、審査をする者が同じ立場にあるといってもいいような構図ではないのか。これで「妥当」と言われても「出来レース」の疑念は消えない。

 東京電力福島第1原発事故が起きてから1年もたっていない。政府の事故調査・検証委員会などの最終的な報告書も出ていない。原発事故の原因が地震か津波に由来するのかもまだ特定できていないのである。

 「再稼働ありき」のステップを踏んでいるとしか映らない。過酷事故(シビアアクシデント)を起こしながら、あまりに安易な進め方ではないのか。

 経済産業省原子力安全・保安院は、定期検査で停止している関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県)について、同電力が出していた安全評価(ストレステスト)報告書を妥当と判断した。これまでに14基の原発の安全評価報告書が出ているが保安院が判断を示すのは初めてである。

 ストレステストは原発が想定を上回る地震や津波に襲われた場合、燃料損傷に至るまでにどの程度、安全上の余裕があるかどうかをコンピューターにデータを打ち込んで解析するものだ。あくまで机上のシミュレーションである。

 しかも、今回、前提としている想定は、主に東日本大震災前の基準である。

 再稼働に当たって大震災を踏まえた国の新たな基準もない。妥当の根拠が薄弱なのである。疑問は膨らむばかりだ。このような進め方では残りの原発も妥当判断となるのは間違いないだろう。

 保安院は原子力の規制機関であるにもかかわらず、福島第1原発事故で明るみに出たように実態は、事実上の推進機関だ。そんな保安院にそもそも審査する資格があるのか問いたい。

 保安院は4月に解体され、環境省外局の原子力安全庁に吸収されることが決まっている。再稼働を急いでいるとしか思えない。

 23日に保安院の評価手法を監査する国際原子力機関(IAEA)の代表団が来日しており、そこから逆算して判断の段取りをしたはずだ。

 もちろん、保安院の妥当判断だけで再稼働が決まるわけではない。保安院の評価方法が適切かどうかIAEAの監査・助言を受け、2月にも正式な審査書を作成。内閣府原子力安全委員会がチェックする。再稼働するかは、最終的に野田佳彦首相と関係3閣僚が政治判断する。

 野田首相は「原発依存度を引き下げる」としながら「定期検査後の再稼働を進める」と言っている。ただ地元自治体の同意が不可欠だ。こんな審査では福井県の西川一誠知事が慎重姿勢なのは当然だ。

 保安院は審査書案を審理する専門家会議を傍聴しようとした市民団体を排除した。審理の透明性が求められているのに、密室性の体質をさらしたと言わざるを得ない。「前回の不規則発言を理由にしているが、数分遅れた程度」などと2委員が市民団体排除に抗議し会議を欠席した。委員からも異議が出ている。保安院は重く受け止めるべきだ。

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