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住み慣れた地域で、あるいは生まれ島に戻り実家の支えを得て、出産するつもりだった妊婦や家族にとっては「寝耳に水」だったに違いない。
八重山地域で唯一、出産に対応する県立八重山病院で、4月以降、出産に対応できない恐れがある、という。産婦人科の医師が不足する見込みのためだ。
同病院によると、現在、産婦人科に勤務中の医師4人は3月末で全員転勤する予定で、4月からは新たに医師4人の勤務が決まっていた。
しかし、中核を担う医師1人が、個人の事情で7月まで赴任が困難になった。連動して、指導医クラスの医師がいることが条件だった1人も赴任できなくなる可能性がある。
その後の調整で、転勤する医師のうち2人は、4月中とどまり対応することになった。ただ、5月以降は、依然として未定のままだ。2人態勢では帝王切開などに対応できないため、代わりの医師が見つからない場合、基本的に出産は取り扱わない、という。
同病院は、4月から9月まで出産を予定している妊婦に対し、他地域で出産する準備を整えるよう呼び掛けている。だが、地元での出産を望んでいた妊婦やその家族にとり精神的、経済的負担はあまりにも大きい。移動による母体への影響も心配だ。
八重山病院は、他の医療機関からの紹介も含め、月に50~60人の分娩(ぶんべん)を取り扱っている。空白期間が生じることのないよう、県をはじめ関係機関が連携して医師の確保に全力を注いでもらいたい。
産科医不足は全国的な問題だ。背景には、24時間体制の過酷な勤務実態と、医療事故の訴訟リスクの高さなどが指摘されている。女性医師が、自身の出産や育児などで一時的に離職する場合も多い。
厚生労働省の調査によると、2010年末時点の産科医は全国で1万652人。06年を底に微増傾向にあるものの、厚労省は「産科医の負担は依然大きい」とみている。
さらに島嶼(とうしょ)県・沖縄にとって、離島へき地医療の問題が前提として横たわる。
北部や八重山、宮古など、都市部から遠い地域の医療体制は厳しい。これまでも産科医不足で、新規患者の診療制限や救急患者の受け入れ休止などを余儀なくされる場合があり、綱渡りの状況が続く。
国は、産科医不足対策として、施設の集約化を進めている。だが、海を隔てた離島地域では、困難なのは明らかだ。
今回の急場を何とかしのいだとしても、産科医不足の根本的な解決にはならない。
安定的な医師確保を可能にする仕組みづくりを、4月から始まる新たな振興計画においても盛り込んでもらいたい。医師個人に過剰な負担がかからないよう勤務環境の改善も急務だ。
本来、次代を担う新たな命の誕生は、親や家族のみならず地域にとっての希望だ。その誕生に携わる産科も、重要な医療分野である。産科が崩壊すれば、地域の崩壊にもつながりかねない。「子宝の島」の将来を見据えた施策を積極的に進めてほしい。