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犯行当時、被告は18歳と1カ月の少年だった。少年法は18歳未満の少年への死刑適用を禁じている。わずか1カ月の違い…。母子2人を殺害して殺人と強姦(ごうかん)致死などの罪に問われたこの被告に死刑を適用することは妥当か。
最高裁が下した最終的な結論は「死刑」だった。
1999年4月、山口県光市で起きた母子殺害事件。差し戻し上告審判決で最高裁は「少年だったことを考慮しても刑事責任はあまりにも重大」(金築誠志裁判長)だと指摘し、被告の上告を棄却した。
一審、二審はいずれも無期懲役だった。年齢を考慮し、矯正教育による更正の可能性を認めたのである。中学生のときに母親が自殺するなどの事情も考慮された。
上告審で最高裁は二審判決を破棄。差し戻し控訴審は「極刑はやむを得ない」と死刑の判決を下した。
無期懲役か死刑か。差し戻し後の上告審判決は「犯行は甚だ悪質で、動機や経緯に酌量の余地はない」と断じた。
犯行時の年齢や更正可能性よりも、結果の重大性や被害者の立場を重視する方向にかじを切ったのである。
最高裁は1983年、永山則夫元死刑囚(犯行当時19歳、97年に死刑執行)の事件をめぐって、死刑の基準を示した。1983年以降、死刑が確定した少年事件3件は、すべて死亡被害者が4人。死亡被害者が2人のケースで死刑が確定するのは今度が初めてだ。今回、判決内容が無期懲役から死刑に変わったのはなぜだろうか。
犯行の残忍性、結果の重大性と同時に、今回、最もクローズアップされたのは、被害者感情である。
最愛の妻と生後11カ月の長女を失った本村洋さん(35)は、事件発生から13年間、深い喪失感と、妻子を守れなかったという自責の念にさいなまれ続けてきた。
本村さんの存在を抜きにして、この事件を語ることはできない。本村さんは、犯罪被害者への配慮を欠いた刑事司法の実情に強い憤りを覚え、「全国犯罪被害者の会」の結成に参加。本村さんらの訴えが世論を動かし、犯罪被害者基本法の成立につながった。
差し戻し後の上告審判決は「遺族の被害感情はしゅん烈を極めている」と指摘している。
犯罪被害者の権利拡充という流れの中で、今回の死刑判決が示された、といえる。
少年事件に対する死刑適用は、さまざまな問いや課題を突きつける。
4人の裁判官のうちただ1人、宮川光治裁判官は「年齢に比べ精神的成熟度が低く、死刑回避の事情に該当し得る」と、死刑事件としては異例の反対意見を述べた。
無期懲役と死刑の境目をどこに求めればいいのか。基準は明確でなく、何に重きを置くかは、個別の事例によって変わる。
裁判員制度の下で究極の判断を求められるのは市民である。死刑に関する論議を深め、客観的な基準を示す必要があるのではないか。