[大弦小弦]「時の翼に乗って悲しみは飛び去る」…

2012年2月23日 09時55分

 「時の翼に乗って悲しみは飛び去る」。17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌがこんな言葉を残している

 ▼人の悲しみは時間が癒やしてくれるという意味だが、悲しみが大きすぎて時の翼に乗れず、深い喪失感を抱えて立ちつくす人もいる。この方も最愛の肉親を殺害され、事件の日から「時」は止まったままなのだろう

 ▼13年前に山口県光市で起きた母子殺害事件で、妻と生後11カ月の長女を奪われた本村洋さん(35)のことである。最高裁が20日、犯行当時18歳1カ月だった被告の上告を棄却、死刑が確定する

 ▼元少年の死刑確定には異論も多い。でもあらためて思う。幸せな家族の未来を突然奪った残忍な行為に見合う罰とは何だろうかと。例え少年であっても、自らの命で償うしかない。そう主張した本村さんに反論できる言葉が見つからない

 ▼事件を通して、人の強さを教えてくれたのも本村さんだった。悲しみを乗り越え、被害者に配慮を欠いた現行の刑事司法制度の欠陥を厳しく追及。「重罪には厳罰を」と世論を動かし、犯罪被害者基本法の成立につなげた

 ▼被告の死刑確定という結論は出るが、妻と長女が元気だったころに「時」を巻き戻すことはできない。今はただ、止まっていた本村さんの時間が動きだし、悲しみを癒やす「時の翼」になればと願う。(稲嶺幸弘)

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