トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱を表明した。

 「他国に利益をもたらし、米国の労働者に不利益を強いる」と、経済面の悪影響を理由に挙げる。再交渉を示唆したとも伝えられているが、何をかいわんや、である。パリ協定には190カ国以上が合意し、すでに140を超える国と地域が批准している。

 シリアなどごく一部の国を除き、ほぼすべての国連加盟国が、「地球の未来」のための「共通の責任」を自覚し、温暖化対策の新たな国際ルールを取り決めたのである。

 京都議定書では先進国のみが温室効果ガスの排出削減義務を負った。パリ協定は、発展途上国を含むすべての国が削減に加わり、今世紀後半に二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにするという目標を掲げている。

 中国に次いで世界2位の温室効果ガス排出国が、この段になって協定から抜けるというのは、地球の未来に背を向けた大国の身勝手な振る舞いというほかない。

 米国は、途上国の温暖化対策を支援する国際基金「緑の気候基金」への最大の拠出国になっているが、トランプ大統領は、同基金への拠出中止も明言した。海面上昇で水没の危機にさらされる南太平洋の島しょ国の反発は必至だ。 パリ協定からの離脱は、米国内の対立を深め、国際社会における米国の指導力をいっそう低下させるに違いない。先進国と途上国の対立を再燃させるおそれもある。

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 トランプ大統領は就任以来、奇行、愚行、決めつけ、思い込みが多く、今や外交分野にまでその弊害が現れ始めている。

 大統領は声明で「米国は最も環境に優しい国であり続けるが、ビジネスや雇用を犠牲にはしない」と強調した。

 かつて鉄鋼業で栄えたピッツバーグを引き合いに出し、こうも語った。「私はピッツバーグで選ばれたのであって、パリではない」

 ピッツバーグのペドゥート市長は「受け入れられない判断を正当化するために(ピッツバーグの名前が)使われ、私も市民もがくぜんとした」との声明を発表した。

 離脱表明への批判は国内だけでなく、世界的な規模で広がっている。

 目標に沿って温室効果ガスの削減を進めていけば、危惧するとおり、石炭関連産業が打撃を受けるかもしれない。ただし、その分野の雇用が減ったとしても、別の分野での雇用拡大は十分に可能だ。

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 脱炭素社会に向けた産業構造の転換と社会変革こそが求められているのである。実際、再生可能エネルギーなどの分野では、各国でイノベーション(技術革新)が進んでいる。温暖化対策は新たなビジネスを生む機会でもある。

 日本が果たすべきは、トランプ氏をかばうことでも、批判を遠慮することでもない。米国の「ごね得」を許せば、参加国の間に不公平が生じる。再交渉に応じるべきではない。各国との協調体制を維持し、結束を図ることが優先課題だ。