辺野古新基地建設を巡って、翁長雄志知事が再び国を提訴する。防衛省が海底の地形を変える岩礁破砕許可を県から得ないまま埋め立て工事を進めているのは県漁業調整規則に違反しているとして、7月に工事差し止め訴訟を那覇地裁に起こすと発表した。

 判決が出るまでの間、工事を中断させるための仮処分も同時に申し立てる。

 県が提訴の根拠としているのは、このまま防衛省が工事を続ければ、岩礁破砕行為につながるのは確実だと判断しているからだ。

 防衛省は4月25日、辺野古沿岸部を埋め立てるための外枠となる護岸工事に着手している。前知事が防衛省に出した岩礁破砕許可は3月で期限切れとなり、翁長知事に再申請しなければならないにもかかわらず、防衛省は再申請せず、工事を続行している。

 名護漁協が米軍キャンプ・シュワブ沖の「臨時制限区域」の漁業権を放棄する手続きをとったため、岩礁破砕許可を受けなくても工事を続行できるというのが防衛省の主張だが、水産庁はこれまでの見解を豹(ひょう)変(へん)させている。

 水産庁は漁業権切り替え手続きの際に各都道府県へ提示する「技術的助言」などで「漁業権の変更(一部放棄)」を漁協で議決しても、知事が許可しない限り、漁業権は変更されないとの趣旨の見解を示している。180度の転換だ。

 水産庁長官ら関係省庁の担当者が3月、首相官邸で協議。防衛省はその数日後に水産庁の新見解を得ている。水産庁は変更について県の問い合わせに回答せず、従来見解との整合性の説明もない。

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 国は辺野古新基地に関する訴訟は昨年末の違法確認訴訟で県が最高裁で敗訴したことで決着済みとの考えだ。

 菅義偉官房長官は昨年3月の代執行訴訟の和解条項を持ち出して裁判の判決に従うことが明記されているとたびたび言及する。県の対抗措置はわがままであると印象付けたいのだろう。だが、翁長知事が判決に従うことを言明したのは違法確認訴訟で、今回の提訴とはまったく別の話だ。

 国は県の要求をことごとく蹴っている。前知事が埋め立てを承認した際の留意事項としていた本体工事に入る前の事前協議を防衛省はほごにした。汚濁防止膜の重りとするコンクリートブロックを変更したとして県が防衛省に経緯の説明と工事中止を求めたが、取り合わなかった。

 国の一方的な強行姿勢は環境影響評価法、公有水面埋立法、地方自治法の精神から逸脱するものだ。

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 翁長知事は最高裁で敗訴が確定した違法確認訴訟と、今回の提訴は別の訴訟であることをわかりやすく、丁寧に、国際社会、国内、県内に訴える必要がある。

 知事は就任以来、米軍統治下で理不尽な扱いを受けた県民の声を象徴的な言葉で代弁し、共感を得てきた。

 だが違法確認訴訟で県が最高裁で敗訴してから、県内外に向かって沖縄の正当性を発信する機会が少なくなっている。提訴を機に再び発信力を高めてもらいたい。