東京で電車に乗っていて、新聞を読む人をほとんど見かけなくなった。つい数年前まで、満員電車でもきれいに折り畳み、周囲にぶつからずに読む“職人技”を目にした。今は専ら視線の先はスマートフォンの画面だ

▼若い世代を中心にニュースを得る方法が紙媒体からネットに変わった。手段にとどまらず、受け取るニュースの質も変わりつつある

▼「うちには編集部は存在しない」。あるニュースアプリ関係者の言葉だ。ニュース価値の判断は人間ではなく、アルゴリズム(コンピューターの算法)が読まれるニュースか否かを自動で判定する

▼悩ましいのは、選んだ記事が事実に基づくのか、フェイク(偽)なのか問われないことだ。むしろフェイクの方が反響を呼び、読まれるニュースとみなされるという

▼アルゴリズムは、受け取り手の見たい情報を推測し、嗜好(しこう)に沿った記事を選別する。その結果、閉じられた居心地の良い言論空間(フィルターバブル)に包まれ、好みに合わない情報から遠ざかってしまう

▼「意見の異なる世界が偶然目に飛び込む環境を研究している」。ニュースアプリ関係者は、アルゴリズムによる「情報の適切な混在化」を課題に挙げた。それこそネットに対抗し得る新聞の強みだろう。ふと見た記事に思わず見入る。紙面には「偶然」が詰まっている。(西江昭吾)