2017年(平成29年) 11月18日

社説

社説[比嘉大吾選手凱旋]新たな挑戦の始まりだ

 25年ぶりに沖縄から生まれたプロボクシングの正規チャンピオンの凱旋(がいせん)である。5月20日に、世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王座をつかみ取った比嘉大吾選手(21)=白井・具志堅スポーツ=のことだ。

 9日は出身地の浦添で市民栄誉賞の授与、那覇での祝賀会では沖縄タイムス社も特別スポーツ賞を贈り、快挙をたたえる。11日はボクシングを志した宮古島で祝勝パレードが予定され、県も「県民栄誉賞」の贈呈を検討している。

 「感動で島が揺れているはず」。所属ジムの会長で、比嘉選手が尊敬する具志堅用高さん(61)が語った言葉通り、県内では祝賀ムードが続いている。祝いの日はまだかと、心待ちにしていた県民も多いに違いない。共に喜びたい。

 テレビの前で興奮し、歓喜した夜を思い返す。動きが速く、パンチ力のある前王者の攻撃を防御しながら、得意の接近戦に持ち込むため踏み込む機会をうかがった。2回、5回とフックで2度のダウンを奪った。流れを引き寄せ、勝負の6回には、ボディーの連打やアッパーで4度のダウンで、ついに前王者をキャンバスに沈めた。

 ひるまず、勇猛果敢に攻め続ける沖縄ボクシングのスタイルを受け継いだ比嘉選手は、1970年代に、沖縄を熱狂させた具志堅さんの現役時代をほうふつとさせた。

 県出身の世界王者(暫定を除く)がベルトを持ち帰ったのは、92年のWBAジュニアウエルター級の平仲信明さん以来、8人目である。凱旋は県民に勇気を与えるものだ。■    ■

 72年の復帰後も、沖縄に重くのしかかった米軍基地負担や、社会経済的な格差からくる閉塞(へいそく)感を打ち破ったのが、76年の具志堅さんの世界制覇だった。那覇でのパレードは何十万人もの市民で埋まった。その後も防衛を重ねる姿に、将来への希望を見いだす県民も少なくなかった。

 それから、上原康恒さん、渡嘉敷勝男さん、友利正さん、新垣諭さん、浜田剛史さん、そして平仲さんらチャンピオンが誕生した。

 今回の比嘉選手の戴冠は、平仲さん以降に訪れた四半世紀に及ぶ「沈黙」に終止符を打ち、かつていわれたボクシング王国の復活の可能性を示している。

 ほかにも、元WBA暫定フライ級王者の江藤光喜選手やWBC世界ユース・フェザー級王者の上原拓哉選手ら有望な県出身ボクサーがおり、ボクシング界で沖縄が再び脚光を浴びることも夢ではない。■    ■

 比嘉選手の戦績は13戦13勝、全てKO勝ちで、日本ボクシング界史上初の記録を打ち立てている。本紙のインタビューでは、タイトル防衛だけではなく、複数階級制覇とともに、連続KO記録についても「浜田さんの15回の日本記録を目標とする」「挑戦者でありたい」と語っている。

 具志堅さんの秘蔵っ子は、新王者となったリングで「ワンもカンムリワシないん」と、師がかつて例えられた猛禽(もうきん)を引き、偉大な王者を目指すと誓った。新たな伝説をつくり出そうと踏み出した若武者の挑戦を応援し続けたい。

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