「対立している人たちの間に橋を架けたい。芸術にはその力がある」。舞台が終わった後の交流会で、イスラエルのアラブ・ヘブライ劇場の男性団員はそう語った

▼彼の友人もパレスチナ自治区で腕を負傷したが、「友人を傷つけたパレスチナを憎むより、平和な世界を作る努力をすることに意味がある」と言葉を継いだ

▼劇団にはユダヤ人とアラブ人が所属。2005年に沖縄市で開かれた「キジムナーフェスタ」で上演した「あかない箱」は民族間の対立と融和がテーマだった。拾った箱を巡り、互いをののしり、けんかをする兄弟が最後は和解する姿をコミカルに描き、子供でも分かる内容に仕上げていた

▼あれから12年が過ぎた。世界では民族・宗教間の対立を原因としたテロがやまない。テロ対策を理由に国内では「共謀罪」法案の審議が進み、米国や欧州では外国人排斥を訴える勢力が伸長している

▼憎しみを乗り越える橋はまだ完成していない。それでも芸術家たちの試みは続く。南仏のアビニョン演劇祭のオリビエ・ピィ監督は、人々の間に壁を作ろうとする排外主義に対し「私たちは壁を壊す」と訴える

▼「芸術や文化で世界を変えることはできない」とシニカルに振る舞うことは簡単だ。それでも信じたい。芸術や文化には壁を壊し、橋を架ける力があるのだと。(玉城淳)