2017年(平成29年) 12月14日

大弦小弦

[大弦小弦]英雄アキレスは栄光に満ちた死を遂げた…

 英雄アキレスは栄光に満ちた死を遂げた。死後に尋ねられ、意外な後悔を口にする。もう1度選べるなら、奴隷でいいから生きていたかった、と

▼ギリシャ神話を、ボブ・ディランさんがノーベル文学賞の受賞講演に引用した。「プロテストソングの旗手」には世界で最も権威ある賞すら拒否するのではないか、と半ば期待する声があった。アキレスのようにイメージを裏切って率直に述べた。「歌も地上でこそ命を宿す」「だから聴いてほしい」

▼とらえどころのない人である。まず歌声が曲によって別人のようだ。労作「ディランを聴け!!」で513曲を解説した中山康樹さんは「どれが本物のディランなのかという疑問、謎」と書いた

▼反戦歌とされる「風に吹かれて」は、「何発放たれたら大砲は禁じられるのだろう」と投げ掛けておいて、「その答えは風の中に舞っている」。この肩透かし感

▼激しい怒り、深い諦め、素朴な愛、ただの悪ふざけ。曲の表情はくるくる変わる。講演で「あらゆることを歌に入れた。それが何を意味するのか、気に病むことはない」と話した

▼歌詞は文学か。受賞は議論を呼んだが、文学は人生であるとも言う。じたばたと生きるけれども意味は良く分からない。そう考えるとディランさんの歌はまさに人生であり、文学そのもののように思える。(阿部岳)

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