米国で取材を続けてきて、沖縄の基地問題解決の鍵を握るのは「沖縄の意志」なのだと感じた瞬間がある。

 あれはオスプレイ配備が目前だった2012年7月。米側の計画を説明する政府に前知事が「配備を強行したら、全基地閉鎖という動きに行かざるを得ない」と述べた時のことだ。

 「沖縄県知事がオスプレイを強行配備したら全基地閉鎖と日米政府を非難したらしい」という知らせを受け取ったワシントンに緊張が走り、在沖米国総領事館は地元の情報を収集して報告し、沖縄の事情に詳しい米学者や識者らは、沖縄の保守基盤に何らかの根本的な変化が生じたのかと意見を求められた。そして米政府内では今後の展開を想定した幾つかのシナリオが練られ、対応策が検討された。

 優先すべきは米軍基地ではなく県民の安全だ、と沖縄の意志を突きつけた前知事はあの時、米政府を話し合いのテーブルに着かせる力を確かに手にしていた。

 もしかしたら基地の存続に関わる根本的変化が沖縄に生じているのかもしれないとの米側の懸念は、前知事による埋め立て承認で「保守系政治家が基地を守る構図は変わらない」という安(あん)堵(ど)感へと変わった。

 あれから時は巡り、「基地は経済発展の阻害要因だ。辺野古に新基地は造らせない」と訴え大差で当選した新知事が誕生した。

 「就任後は勢いよく飛び出すだろうと思っていたが静かだね。予想外で驚いているよ」と話す米国務省の元高官は、新知事の意志がどこにあるのか捉えかねていると打ち明ける。

 前知事の埋め立て承認を「沖縄の総意」と解釈する米側は、新基地建設計画を中止させるには、まず県知事が埋め立て承認を白紙化し、日米合意を変える必要があると説く。しかし、「新知事がそこに踏み込む意志があるのかどうか伝わってこない」と現状を分析しているようだ。

 「国会議員や県議、市町村議ら超党派50人がキャンプ・シュワブのゲート前で始めた座り込み行動の今後の展開に注目している」と話すその元高官は、県民の危機感が彼らを突き動かしているのだろうと語る。

 辺野古周辺の現場では、抗議者の間で負傷者が続出している。

 「優先すべきは米軍基地ではなく県民の安全だ」と新知事は日米両政府に突きつけることはできるだろうか。沖縄の意志はどこにあるのか。再び私たちは問われている。 (平安名純代・米国特約記者)