政府は認知症対策を強化する新たな国家戦略「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を決定した。現行の認知症対策5カ年計画(オレンジプラン)は、医療や介護の施策に焦点が当てられたが、新戦略は「認知症とともに、より良く生きていくための環境整備」を重視したのが特徴だ。

 徘徊(はいかい)による行方不明者が年間1万人以上に上り、投資詐欺といった消費者被害や交通事故など認知症をめぐる問題は深刻さを増す一方である。

 国の推計では、団塊の世代が全て75歳以上になる2025年には、認知症の高齢者が約700万人に達すると見込まれている。現状の7人に1人から5人に1人に増える。

 誰もが認知症と無関係ではいられない時代がもうすぐ到来する。認知症になっても安心して暮らせる社会の実現が一層、求められる。

 認知症の人が「より良く生きる」ためには、病気への理解を深めることが不可欠だ。

 例えば、認知症に対する正しい知識と対応などについて講習を受けた一般市民が認知症の人や家族を応援する「認知症サポーター」は、大きな支えになっている。

 サポーターは、認知症の人と偏見を持たずに接したり、見守りの自主活動グループをつくったり、全国各地でさまざまな活動を行っている。

 認知症サポーターの取り組みは県内でも広がりをみせているが、県内のサポーター数は人口比で見ると全国最低にとどまっている。地域社会や学校での認知症教育に一層力を入れてほしい。

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 認知症は早期発見と対応がその後の鍵をにぎる。新たな戦略では、早期診断に必要な研修をかかりつけ医6万人が受講することを盛り込んだ。また新たに歯科医師や薬剤師への研修を実施し、発症間もない段階での発見と対応につなげる。

 これまで症状が出始めたときに支援を受けられず孤立してしまう「空白の期間」が課題だったが、その解消に向けて医師や保健師らが認知症の人を訪問し、本人や家族を支える「認知症初期集中支援チーム」の設置を推進する。14年度は全国で41市町村にとどまっているが、18年度から全市町村で実施する。

 認知症は根本的な治療法は確立されていないが早期治療で進行を抑えられるものもあるという。新戦略に盛り込んだ数値目標を着実に推進し、実効性を高める国の本気度が問われる。

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 昨年10月、国内では初めて認知症の当事者団体が発足した。実名を公表し、講演などの活動を続けている。根底にあるのは「埋もれていた当事者の声を聞いてほしい」という強い思いだ。

 実効性ある施策には当事者の視点は欠かせない。国は本人や家族と課題を共有し、介護の負担を軽くする施策にもっと力をいれてもらいたい。

 認知症の人は、今後増え続ける。地域社会の一員として認知症の人と向き合い、共に生きていける社会を実現するには、国の充実した支援策とそれを支える地域の取り組みが必要だ。