「選挙結果は真摯(しんし)に受け止めたい」。安倍晋三首相は30日の衆院予算委員会で、赤嶺政賢議員の質問に、そう答えた。「沖縄に寄り添う」という言葉も、これまで繰り返し使ってきた。だが、名護市辺野古で起きていることは、安倍首相の美辞麗句とは正反対の、深刻な事態である。

 翁長雄志知事には会おうとせず、沖縄振興予算も削り、安慶田光男副知事が作業中断を沖縄防衛局に要請した翌日に大型作業船を調査海域に投入し、名護市議会が海上作業の中止を求める意見書を可決したにもかかわらず、工事を強行する。

 政府の姿勢は、名護市長選、県知事選、衆院選で示された沖縄の民意を完全に無視しており、あまりにも異常だ。

 海上保安庁は2004年の調査では強制排除に慎重だった。今回から官邸の意向をくんで強硬路線に転じた結果、現場の海上では反対派市民にけが人が続出している。

 映画監督の影山あさ子さんが抗議船に乗り込んだ海保職員に馬乗りにされ、手首をけがした問題は30日、国会でも取り上げられた。

 28日には、海上で海保職員に取り押さえられ、左肋骨(ろっこつ)骨折など約3週間のけがを負ったとして、29歳の男性が海保職員を那覇地検に告訴した。

 工事が進めば進むほど、地元住民や支援者の反発が強まり、衝突の危険性は増す。もしものことが起きたとき、一体、誰が責任をとるというのか。

 日に日に切迫する辺野古の現実を全国の人たちが知ってほしい。

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 中谷元防衛相は30日の衆院予算委で、ブイやフロート(浮具)を固定するために海底に投下したアンカー248個のうち120個が、昨秋の台風の影響で流され、なくなっていることを認めた。

 海草藻場には、アンカーが動いたために削られたとみられる痕跡が36カ所も見つかっている。アンカーによって損傷したとみられる大型サンゴも1群体、確認された。工事による現状破壊が早くも始まっているのである。

 辺野古・大浦湾は、生物多様性の豊かな海域である。今も新種や日本初記録の生物種が次々に見つかっている。国の天然記念物で絶滅危惧種のジュゴンも、周辺海域がすみかだ。

 日本の宝ともいえる生物多様性豊かなこの海域を埋め立てるのは「取り返しのつかない愚行」だと、日本生態学会の加藤真・京都大大学院教授は指摘する(14年7月27日、朝日新聞ネット版)。

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 環境アセスメント学会の島津康男元会長は、辺野古アセスを「史上最悪の独善アセス」と酷評した。

 日本生態学会など国内の19の自然研究団体が連名で、移設計画の見直し、環境アセスの再実施などを国や県に要請したのは昨年11月のことである。

 これだけの専門家団体が埋め立てによるサンゴ生態系の破壊に危惧の念を抱いているのである。その事実を政府は軽視すべきではない。

 今こそ工事中止の声を全国に広げていくときである。