緊迫する「イスラム国」による邦人人質事件。公開処刑をインターネット上に配信するなど残虐な行為を繰り返す「イスラム国」とはどんな集団なのか

 ▼対テロコンサルタントのロレッタ・ナポリオーニ氏は著書「イスラム国 テロリストが国家をつくる時」(文藝春秋)で彼らの目的を「建国」とする。第1次世界大戦中に欧米が引いた国境を無効にし領土を確保するための征服戦争という

 ▼テロや人質事件はそれ自体が目的でなく人々を恐怖でコントロールし資源を得て征服を遂行する手段だ。米国とソ連の冷戦から数十年にわたり繰り返された代理戦争で、欧米が中東の国や武装勢力に渡した資金や物資が彼らの武器になっている

 ▼結果私たちの目の前にあるのは、長い紛争で武力が武力を生む中東と、報復が繰り返される世界の姿だ。9・11以降欧米は武力行使を強化したがテロや紛争の勢いは、やむどころか深刻さを増している ▼ナポリオーニ氏も「先進国による対テロ政策はカリフ制国家(イスラム国)の出現を防ぐことに失敗したと認めなければならないときがきている」と力による対応の限界を示唆する

 ▼どうすれば憎しみの連鎖を断ち切ることができるのか。すでに多くの先人が告げている。ナショナリズムの強固な壁を打ち破るのは「武力ではなく対話」であると。(黒島美奈子)