先週末、やんばるの国道が大渋滞し驚いた。県内各地でほころび始めたピンクの花に誘われ、人々が名護城や八重岳、今帰仁城跡を訪れた。名護さくら祭り会場も、カメラを手に花を愛(め)でる人でにぎわった

▼桜並木を取材中、枝におみくじが結ばれた木を見つけた。木が傷むため、決して好ましい行為とは言えないものの、美しい立ち姿に願いを託し、幸せを祈りたくなる気持ちも分かる

▼「どうか無事で」。そんな、心からの祈りはついに届かなかった。砲弾が飛び交う中を、命がけで生きる人々の声なき声を発信し続けたジャーナリスト、後藤健二さんが凶行に倒れた。訃報は、衝撃と悲しみを残した

▼沸き上がる怒りと同時に「平和」がどれほどありがたく、大切なものかをつくづく痛感する。当たり前のように笑い、語り合い、安心して暮らせる幸せ。意識せぬ間に、いつしか失うことがあってはならない

▼桃色の花が咲き誇る同じ名護市の東海岸では、平和を守るための厳しい闘いが続いている。海を壊し、生き物を埋めて建設される米軍基地は、戦争のためのものだ

▼後藤さんの故郷は「杜(もり)の都」仙台。やがて木々が青々と芽吹き、やんばるから北上する桜前線が全国を彩るだろう。再び、古里の地を踏みたかったに違いない。伝え続けた彼の思いを、決して忘れるまい。(儀間多美子)