将棋界で14歳の快進撃が止まらない。最年少棋士、藤井聡太四段(14)が昨年のプロデビュー以来、公式戦連勝記録を28に伸ばし、連勝記録で歴代最多の神谷広志八段(56)に並んだ。

 無敗の28連勝は、30年ぶりの達成で、多くの人が予想もし得なかった快挙である。新星の一挙手、一投足がニュースになり、本人が「大志」と揮毫(きごう)した扇子が売り切れるなど、将棋ブームも再燃している。将棋界に彗星(すいせい)のごとく現れたニュースターの誕生と活躍を喜びたい。

 中学生でプロ入りした史上5人目の棋士である。加藤一二三・九段(77)が持つ14歳7カ月のプロ入り最年少記録を、14歳2カ月へ、62年ぶりに塗り替えた。デビュー戦も相手となった加藤九段を破って、初陣を飾っている。

 「神武以来の天才」と呼ばれた加藤九段の引退が決まった翌21日に、藤井四段が歴代最多連勝記録の金字塔を打ち立てた。「天才」という称号の引き継ぎを暗示しているようでもある。

 愛知県瀬戸市の中学3年生。5歳のときに祖母からもらった将棋セットで遊び始め、のめり込んだ。名古屋市の杉本昌隆七段(48)に入門して才能を開花させた。

 強みは、詰め将棋で培った「読みの深さ」や、隙のなさ、安定感と言われる。弟子の快挙を喜んだ杉本七段は「棋士になって安定感が増してきた。できの悪い将棋がみるみる少なくなった」と評する。さらに勝ち進んで連勝記録の更新や、最年少でのタイトル獲得を実現してほしい。

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 詰め将棋で読みや勝つ手順を磨くだけでなく、人工知能やコンピューター技術が高度に発達した現代という時代も、実力向上に一役買った。

 藤井四段は将棋ソフトを研究に取り入れて、形勢の優劣を見極める力の向上に役立てている。将棋ソフトの活用によって集中力や対応力が鍛えられる側面もあるらしく、進化のスピードに驚く棋士も少なくない。

 そのコンピューターソフトは近年、将棋や囲碁の世界のトップ棋士の前に立ちはだかる。名人もコンピューターにかなわない時代に入り、将棋や囲碁の世界で活躍する夢や魅力をそいだ面もある。

 何かとコンピューターに翻弄(ほんろう)されてきた将棋界だが、新しい世代がソフトやネットを使った研究などで力をつけた上で、人間らしいドラマのある対局をみせることが人の心を動かすと、示した意義は大きい。 

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 若者の活躍は社会を元気にする。最近は、藤井四段ら10代の活躍が目立っている。

 若手育成を強化している卓球では、6月の世界選手権では17歳の平野美宇選手がシングルスで48年ぶりの銅メダル、16歳の伊藤美誠、早田ひなの両選手もダブルスで銅メダルを獲得した。男子は13歳の張本智和選手が史上最年少でベスト8に進んだ。

 将棋には「奨励会」というプロ養成のシステムがある。若い才能を見いだし、新たな技術や知見を投入し可能性を伸ばす。そんな仕組みづくりを各分野で模索すべきである。