つらい闘病記でありながら、紡がれた言葉の一つ一つに励まされた人は多い。

 乳がんを患い闘病生活を送っていたフリーアナウンサーの小林麻央さんが、34歳の若さで逝った。あまりに早すぎる。

 登録読者数が250万人を超えるブログは亡くなる2日前まで更新され、最後の投稿には5万件を超える追悼コメントが寄せられている。

 これほど多くの人々を引きつけ、共感を呼んだブログがあっただろうか。

 麻央さんが「KOKORO.」と題したブログを開設したのは2016年9月。乳がんであることが分かってから2年近くたったころだった。

 がん告知時の心境に始まり、抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けたこと、がんが転移していることも包み隠さず記し、病状が悪化しやつれた姿も掲載した。

 亡くなる1カ月ほど前に投稿した「痩せる」のタイトルの記事では、鏡に映った自身の姿に衝撃を受け涙を流すが、「精神力までは痩せ細ってないです」と書く。

 ブログが更新されるたびにニュースとなるなど社会の関心を集めたのは、希望を失うことなく困難に立ち向かう姿が人々の心を打ったからだろう。

 他方、幼稚園の運動会に行くという目標を立てて頑張る投稿からは2人の幼子への愛情があふれ、夫で歌舞伎俳優の市川海老蔵さんとのやりとりをつづった文章からは優しさがにじみでる。

 家族とのかけがえのない時間について、ふと立ち止まり、考えさせるブログでもあった。

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 麻央さんがブログを始めたのは、医師から「がんの陰に隠れないで」と言われたことがきっかけという。

 どんな状況であっても主体的に生きるとの決意を「なりたい自分になる」との言葉で表す。

 ブログは海外でも注目を集め、英BBC放送の世界の人々に感動や影響を与えた「100人の女性」の一人にも選ばれた。

 そのBBCに寄稿した文章の言葉が深く心にしみる。

 「病気になったことが私の人生を代表する出来事ではない」「私の人生は家族に愛され、愛した、色どり豊かなもの」「だから与えられた時間を、病気の色だけに支配されることはやめました」

 乳がんなど病と闘う人たちが特に共感したのは、病気であっても自分の人生を歩んでいく心の強さではなかったか。

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 乳がんは女性が最もかかりやすいがんで12人に1人が罹患する。発見しやすく、早期なら根治しやすいとされるが、14年には約1万3千人が亡くなっている。

 もちろん予防や検診は重要だ。しかし病と完全に無縁でいることはできない。

 多くの人を勇気づけた麻央さんのブログの最後の文章は、「皆様にも、今日、笑顔になれることがありますように」。

 若くして惜しまれながらの旅立ちだが、キラキラとした光を放った人生だった。