社内で元プロボクシング世界王者・具志堅用高さん(62)の話題になると、50代以上の先輩の語り口は一様に熱い。1970年代、リング上から放つパンチとしまくとぅばが「どれだけ劣等感を払拭(ふっしょく)してくれたか」と

▼ファンの70代女性は一族を説得して門中墓を閉じ、具志堅さんが宣伝する墓地に移すことを決めた。「私たちに沖縄の誇りを取り戻してくれた人。ご先祖様の供養になる」

▼先日、具志堅さんにインタビューした(25日付)。「当時、本土と沖縄には、はっきりした線が引かれていた」との言葉が印象に残る。自分の発言の影響力を知ってか、「差別」「偏見」という直接的な表現は最後まで使わず、「その線を消すために、僕は頑張ったのよ」と語った

▼沖縄への感謝の気持ちは絶対に忘れない。那覇市内で9日、世界王者になったまな弟子の比嘉大吾選手(21)の祝勝会で、真っ先に駆け寄ったのは師匠で元興南高校ボクシング部監督の金城眞吉さん(72)の元だった

▼昨年から体調を崩し、指導者を退いた師にベルトを抱かせた。「監督、取りましたよ」と報告し、比嘉選手には「俺の大先生だぞ。ボクシング王国を築いた人だぞ」と自慢した

▼さまざまな困難の続く沖縄だが、具志堅さんの約40年前のファイトが教えてくれる。どんなに苦しくても強敵でも諦めず、前へ前へ。(磯野直)

名伯楽のミット―ボクシング王国・沖縄金城眞吉の道
磯野 直
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