2017年(平成29年) 12月14日

社説

社説[国際女性会議]安全・安心 脅かす基地

 米軍駐留国・地域の女性が一堂に会し、基地問題の解決に知恵を出し合う「軍事主義を許さない国際女性ネットワーク会議」がことし、慰霊の日を挟み沖縄で開かれた。

 ネットワークは、相次ぐ性犯罪をはじめ米軍による人権蹂躙(じゅうりん)の実態を米国民に知ってもらおうと、県内の女性たちが1996年に決行した訪米ピースキャラバンがきっかけ。同じ問題を抱える米軍駐留国・地域の女性が集い、翌97年に初の会議を開いた。20年の時と、国境という壁を越えた女性たちのつながりを評価したい。

 今回は沖縄、日本、韓国、フィリピン、ハワイ、グアム、プエルトリコ、米国から、5日間の日程に最大170人が参加。「軍隊と性暴力」「安全保障の再定義」など五つのテーマで情報交換した。

 それぞれの場所で草の根の活動に尽力する女性たちの報告で知るのは、安全保障政策の下で置かれる米軍基地が地域の安全・安心を脅かしているという矛盾である。

 韓国では2015年、烏山(オサン)空軍基地に炭疽(たんそ)菌が搬入され、搬入過程で韓国人22人が菌にさらされたことが分かった。感染の有無は明らかにされていない。16年に地元の反対を押し切り配備された高高度防衛ミサイル(THAAD)は中国や北朝鮮との緊張関係を高めている。

 ハワイでは近年、ハワイ島の中心部ポハクロア地域の実弾演習で劣化ウラン弾の使用が判明、放射能汚染が指摘されている。広大な実弾演習地域を持つグアムは、周辺地域や海域への立ち入り禁止が年273日間続き、漁業や観光に深刻な影響を及ぼしているという。

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 地域の意向を無視した演習強化を可能にしているのが、米国と駐留国・地域との植民地的関係だ。会議の各国報告からはそんな構図も浮かび上がる。

 米国の準州グアムの住民は、大統領選挙の投票権がない。住民の意思が政治に反映されない仕組みは、基地の縮小・閉鎖が相次ぐ米国本土とは対照的に、同島の基地強化につながっている。

 沖縄やフィリピン、韓国からは、不平等な地位協定の存在が住民の暮らしを脅かす実態が指摘された。1992年に返還が決まったフィリピンのスービック、クラーク両基地だが、25年たつ現在も深刻な環境汚染で住民の健康被害報告が後を絶たず、跡利用も進んでいない。

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 米国からは軍事偏重の予算配分が、国民生活に深刻な影響を及ぼす安全保障政策の矛盾も報告された。カリフォルニア州だけで11万人超のホームレスが存在し、子どもの6人に1人が貧困にあえいでいるという。米国の軍事費は約60兆円で世界1位(15年)。これは2位の中国含め上位8カ国を足したよりも多い。トランプ政権は今年度そんな軍事費をさらに増額する方針を打ち出した。

 「止めどない軍事化は、誰のための安保なのか」。米国や、日本をはじめとする米軍駐留国は、国際女性会議が発する問いに耳を傾けるべきである。    

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