2017年(平成29年) 11月21日

1935沖縄 よみがえる古里

【サバニ職人】舟の機能美とことん追求 宮崎産「飫肥杉」使いぜいたくに

 1935年の写真群には糸満でサバニを造る工房が写っている。金づちでノミをたたき、木を彫る音が聞こえてきそうな光景に、サバニ職人になって約50年の大城清さん(67)=糸満市西崎=は見入った。

1935年の説明に「ノミを使って造られる刳舟(くりぶね)」とある1枚。工房の両端には板材が立てかけられており、刳舟といっても丸木をくりぬく「丸木舟(マルキンニ)」ではなく、板材を張り合わせる「接ぎ舟(ハギンニ)」であると分かる。漁法や何人用か、イノーの内、外のどちらで使うかなどで職人の数だけ特徴が異なるとされた。同年は日露戦争(1904~05)から30年の節目で、旧海軍がバルチック艦隊を発見した山原船の船頭、サバニで急報を伝えた5人の計6人を「沖縄六勇士」(大阪朝日新聞、同年2月25日など)として表彰し、軍の宣伝に使った。サバニに乗った漁師は、沖縄戦でも切り込み隊や伝令にされた(写真はいずれも朝日新聞提供)

サバニの材料となった宮崎県産の「飫肥(おび)杉」と、運ぶための荷車。丸太を面取りして四角に近い形に整えられており、ここから板材を切り出す。「すらーっとして、素性がいい木」と評したのが約50年の経歴を持つサバニ職人、大城清さん(67)=糸満市西崎。20歳のころ、目利きぞろいの先輩職人と宮崎に買い付けに行き、「山積みになった中から、いい木ばかりを抜き出したから『売り物がなくなる』と業者が困っていた」。実際に選んで見せ、造らせてみて木の良し悪しを伝える先輩の気配りに「人を育てる気風にあふれていた」と懐かしむ。写真左の奧と手前に、既に切り出された板材がみえる。作業場近くかもしれない。現在の同市糸満、前端区辺りとみられる

1935年の説明に「ノミを使って造られる刳舟(くりぶね)」とある1枚。工房の両端には板材が立てかけられており、刳舟といっても丸木をくりぬく「丸木舟(マルキンニ)」ではなく、板材を張り合わせる「接ぎ舟(ハギンニ)」であると分かる。漁法や何人用か、イノーの内、外のどちらで使うかなどで職人の数だけ特徴が異なるとされた。同年は日露戦争(1904~05)から30年の節目で、旧海軍がバルチック艦隊を発見した山原船の船頭、サバニで急報を伝えた5人の計6人を「沖縄六勇士」(大阪朝日新聞、同年2月25日など)として表彰し、軍の宣伝に使った。サバニに乗った漁師は、沖縄戦でも切り込み隊や伝令にされた(写真はいずれも朝日新聞提供) サバニの材料となった宮崎県産の「飫肥(おび)杉」と、運ぶための荷車。丸太を面取りして四角に近い形に整えられており、ここから板材を切り出す。「すらーっとして、素性がいい木」と評したのが約50年の経歴を持つサバニ職人、大城清さん(67)=糸満市西崎。20歳のころ、目利きぞろいの先輩職人と宮崎に買い付けに行き、「山積みになった中から、いい木ばかりを抜き出したから『売り物がなくなる』と業者が困っていた」。実際に選んで見せ、造らせてみて木の良し悪しを伝える先輩の気配りに「人を育てる気風にあふれていた」と懐かしむ。写真左の奧と手前に、既に切り出された板材がみえる。作業場近くかもしれない。現在の同市糸満、前端区辺りとみられる

 「貼り合わせた板のくびれとふくらみは、高波の力を受け流すためのもの。座る板を載せるでっぱりは削り出し。後で部材を接着するよりも余分に木も手間もいるが、丈夫だ」と82年前の職人技を読み解く。

 荷車が運ぶサバニの材料、宮崎県産の「飫肥(おび)杉」が写った写真もある。断面を見て「年輪に偏りがなく、まっすぐ。軽く扱いやすい舟ができる。こんないい木、今は選べない」と、うらやんだ。

 サバニ造りに、ぜいたくな材料や手間をつぎ込んだ時代、舟は漁の成果に直結した。職人は腕を競い、舟主も機能美を求めた。いい舟に、いい乗り手という組み合わせは、最高の性能を引き出した。

 予選を勝ち抜いて旧暦5月4日の祭事、ハーレーに舟を出せれば、3年間は豊漁間違いなしとされた。大城さんは「逆に、不格好だと肥えを運ぶのに使われた」と聞いたことがある。

 漁や漁船の近代化が進み、65年ごろは糸満に「13人ぐらいはいた」(大城さん)というサバニ作り職人も、現在は60代の職人2人だけに。用途も漁から観光、スポーツ用にと変化した。

 大城さんは「時代が変わっても、糸満の象徴。この戦前の写真には、機能美を突き詰めるヒントが詰まっている」と話した。(「1935沖縄」取材班・堀川幸太郎)

写真集「沖縄1935」発売

 戦火に包まれる前の沖縄がよみがえります。待望の写真集が朝日新聞出版社から全国販売。「糸満」「那覇」「久高島」「古謝」と地域ごとに章立てされ、82年前の人々の生き生きとした様子が鮮明なモノクロ写真で紹介されています。

 ■朝日新聞出版社

 ■A4判変型

 ■1,800円(税抜)

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