県医師会と本社がタイアップし、定期的に開催している医療講演会。毎回テーマが変わり、呼応して入場者数や聴衆の反応も違ってくる。人々の関心や、何が知りたいのかが分かり、興味深い

▼担当した十数回の講演で、最も来場者が少なかったのは「たばこの害」。医師らは「禁煙した人、逆にやめたくない人、どっちも来ない」と苦笑い。一方、多くの人であふれたテーマは「認知症」だった

▼中でも、夫を介護する女性の話に人々は聞き入った。徘徊(はいかい)し、感情にムラのある夫との奮闘を、ユーモラスに時に涙も誘いながら語った妻は「認知症は大変。でも愛情を持って接すれば、乗り越えられる」

▼県は6日、2013年度の県内介護施設での虐待数を過去最多と発表した。被害者22人、みな認知症。全国でも虐待数最多の221件中、約85%が認知症の人だ。扱いづらい患者に怒り、暴力でうっぷんを晴らす。そこに愛情はない

▼平均寿命が伸び続ける中、10年後には全国で700万人とも言われる身近な病。政府は先月、認知症対策を国家戦略とし、医療や介護などを柱に161億円の予算を充てた

▼簡単な事ができなくなる悲しみ、いらだちは当人にしか分からない。「彼らの一日は非常に疲れる。だからイライラし、不安になる」と専門家。知ることから、支援が始まる。(儀間多美子)