安倍晋三首相は12日、衆参両院の本会議で、施政方針演説を行った。

 米軍普天間飛行場返還に伴う新基地建設について安倍首相は「引き続き沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら」、名護市辺野古への移設を進めていくことや、「裏付けのない言葉ではなく実際の行動で」、沖縄の基地負担の軽減に取り組んでいくことを強調した。

 安倍首相は、昨年1月の施政方針演説で「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、できることは全て行うとの姿勢で取り組んでいく」と述べていた。今回は、その文言が消え「裏付けのない言葉」という表現が加えられた。

 この変化は何を意味するのだろうか。「裏付けのない言葉」とは、誰に対する批判なのか。辺野古移設に反対する国政野党に対する批判なのか、それとも翁長雄志知事に対する批判なのか。

 首相が言葉ではなく実際の行動で、辺野古移設見直しを米国に申し入れるならば、事態は動く。そうすれば、普天間の危険性除去はもっと早く実現できるはずだ。

 安倍首相は、引き続き沖縄の方々の理解を得る努力を続けるというが、翁長知事が誕生してから今日まで一体どのような努力をしてきたというのだろうか。

 知事が就任あいさつの面会を求めても、首相や菅義偉官房長官は会うのを避け、辺野古では、強権的に海上作業が進められているのが現実ではないのか。首相の言葉がむなしく響く。

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 2014年6月23日の沖縄全戦没者追悼式における安倍首相のあいさつを沖縄の人たちは忘れていない。首相は多くの遺族を前にこう語った。

 「米軍基地の集中が、今なお県民の大きな負担となっています。基地の負担を軽くするため、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、できることは全て行うとの姿勢で全力を尽くしてまいります」

 あの言葉はどこに行ってしまったのか。言っていることとやっていることが、あまりにも違い過ぎるのではないか。

 安倍首相はかねがね辺野古移設が唯一の選択肢だと強調してきた。「この道しかない」というわけだ。このフレーズは実はアベノミクスを語る際にも多用している。

 そういう言葉を使い続けることによって、抵抗しても無駄だと、県民に無力感を植え付けようとしているのは明らかである。

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 名護市長選や県知事選、衆院選沖縄選挙区などで示された沖縄の民意の最大公約数は、沖縄が差別的な扱いを受けることなく安全保障のコストを国民が等しく負うべきであるということ、生物多様性の豊かな海域を埋め立てて新たな米軍の飛行場を建設すべきではない-という点に集約される。

 これは決して沖縄の人々のむちゃな要求ではない。そういう声すら押しつぶして、問答無用の姿勢で基地建設を進めることはとうてい納得しがたい。政府の方こそ、もっと冷静になって沖縄の声に耳を傾けるべきである。