安倍政権はよく「丁寧に説明する」「真摯(しんし)な対話を心掛ける」というが、実行されたことはない。特定秘密保護法、安保法制、「共謀罪」法での世論軽視、森友・加計(かけ)問題では疑惑に正面から向き合わないなど、いくつも指摘できるが、米軍普天間飛行場の返還条件を巡っても、丁寧な説明とは程遠い。

 2013年に日米両政府が合意した、嘉手納基地より南の施設・区域の返還時期などを定めた統合計画で、普天間の返還条件について8項目が記されている。

 その一つに「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」とある。つまりは、緊急時に米軍が民間施設を使える調整が日米間で整わなければ、普天間は返還されないということである。

 6月の参院外交防衛委員会で、稲田朋美防衛相は、民進党の藤田幸久氏の質問に対し条件が整わなければ「返還がなされない」と明言した。名護市辺野古に新基地が完成したとしても返還されないとも答弁している。

 普天間返還を明記した1996年の日米特別行動委員会の最終報告には、緊急時の民間施設使用の条件はない。緊急時に普天間の代替機能を、九州の自衛隊2基地で受け入れることは2006年に日米で合意された。民間施設使用は13年に初めて追加されたが、その理由や経緯を含め一切が明らかになっていない。

 基地問題の一方の当事者である県にさえ説明していないのは、真摯な対話、丁寧な説明とは真逆で沖縄と誠実に向き合っていない証左である。政府は、説明責任を果たさなければならない。

■    ■

 米政府監査院が4月にまとめた報告書では、辺野古新基地は滑走路が短く、普天間で保持してきた機能や任務能力が損なわれると懸念。緊急時に使用できる空港について、県内1カ所を含む国内12カ所を確定するよう指摘した。

 県内の1カ所について、日米政府は明らかにしていない。だが、普天間の滑走路の長さ(2800メートル)を勘案すれば、那覇空港(3千メートル)が対象と推定され、翁長雄志知事は5日の県議会で「(米軍には)絶対に那覇空港を使わせない」と国をけん制した。

 那覇空港は過密で、自衛隊との共用による騒音、事故などの影響が懸念されている。過密解消や観光需要に応えるため第2滑走路の増設が進むが、米軍受け入れは増設の目的と矛盾し、負担軽減にも反する。到底、納得できない。

■    ■

 13年の日米合意からは、受け入れる民間施設がない状況では、普天間の運用を停止することはそもそも不可能となる。

 稲田氏も、日米で調整できなければ、5年以内の運用停止は実現できないと認めている。14年に政府が運用停止を県に約束した際には、すでに成立しないと分かっていたはずで、約束はパフォーマンスにすぎなかったといえる。

 国会は、民間施設使用条件で政府に詳細な説明を求め、不誠実な姿勢を追及すべきである。