名護市辺野古海域に生息する国の天然記念物ジュゴンを保護するため、日米の環境保護団体などが、新基地建設工事の中止を求めた「沖縄ジュゴン訴訟」で、米サンフランシスコ連邦地裁が、原告の請求を却下した。

 米国の国家歴史保存法(NHPA、文化財保護法)を根拠に米国防総省を相手に、米国内で裁判を起こして沖縄のジュゴンを保護するという取り組みは、実質的な審理に入ることなく、事実上の門前払いとなった。

 環境保護政策において日本に比べて厳格といわれる米国だけに、とうてい納得がいかない決定だ。

 連邦地裁の裁判官は「日米合意に基づいた基地建設」に関し「裁判所は差し止めたり、介入したりする権限を欠いている」と理由を述べた。

 国防総省が「普天間飛行場の代替施設建設は、安全保障や外交政策上の問題」で司法が関与するケースには当たらないとして「政治問題の法理」を根拠に却下を求めた主張を、米国の裁判所が認めたのである。

 そもそも、原告側が訴えていたのは、国防総省がNHPAに基づいた手続きを満たしていないという問題だった。

原告らは「環境問題が政治問題にすり替えられた」と指摘する。

 日米両政府が合意しているとはいえ、辺野古の海を埋め立てて、米軍基地を造ることに県民の多数意思は反対である。

 生物多様性豊かな海を次世代に残したいというのが、県民の強い思いなのである。

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 同訴訟で、連邦地裁は2008年の中間判決で、国防総省のNHPA違反を指摘し、ジュゴンへの悪影響を回避する手続きを取るよう命じた。

 裁判は12年2月から休止されていたが、国防総省は14年4月、日本政府の辺野古アセスを基に「ジュゴンの生息に影響しない」と結論づけた報告書を提出した。

 これに対し、原告側が訴訟の再開を申し立て、同年12月の審問で裁判官が本案審理に入るかどうか決定するとの方針を示していた。

 しかしこの過程には問題がある。報告書の基となった辺野古アセスは、数多くの不備が指摘されている。

 政府の環境影響評価書はジュゴンが「辺野古地先を利用する可能性は小さい」とするが、事前調査による海域のかく乱がジュゴンを追い出したとの専門家の指摘もある。

 実際、アセスの後に環境団体が、埋め立て予定地から多数のジュゴンの食(は)み跡を確認している。

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 辺野古の海では、海上作業で投下されたコンクリートブロックがサンゴを破壊している。県が環境保全指針で「自然環境の厳正な保護を図る区域」のランク1に指定している海域での自然破壊である。

 米国のNHPAは、米政府による海外での行為に対し、他国の文化財への影響を考慮するよう義務付けている。

 辺野古の基地建設には米政府も強く関与している。一方の当事者として、米国には辺野古海域の環境保全に努める責務がある。