【連載・空手と私】島袋太悟さん(小林流武徳館太悟道場館長)

 向かい合う相手は敵ではなく、分かり合える仲間-。建築資材を扱う「タイガー産業」の社長を今春まで務めた島袋太悟さん(40)は現在、小林流武徳館太悟道場(沖縄県宜野湾市新城)の館長として空手に打ち込む日々だ。社長業では、空手で学んだ「気付き」の部分を社員教育に応用し、人材を育ててきた。空手では組手、ビジネスでは議論を通して相手と徹底的に向き合うというスタイル。「互いを理解し、目標を共有すれば表情と行動が変わっていく」。空手の指導とともに社長業の経験も踏まえ、これからは「人材育成の場」でさらなる可能性を広げたいと意気込んでいる。(政経部・照屋剛志)

型を演武する島袋太悟館長=宜野湾市新城(下地広也撮影)

タイガー産業の社長時代に就職説明会で講演する島袋さん(本人提供)

型を演武する島袋太悟館長=宜野湾市新城(下地広也撮影) タイガー産業の社長時代に就職説明会で講演する島袋さん(本人提供)

 島袋さんと空手の出合いは小学校4年生。自宅の目の前にあった小林流武徳館総本部道場に母親の勧めで入門した。週4日の稽古を欠かさず続け、高校3年生で、極真系空手の県大会で優勝する腕前になった。2002年に道場を開設し、今では100人の門下生を抱える。

 伝統空手を続けてきた中で大きな学びは「人は、自分が思うようには動かないということ。今、ようやく分かってきた」と話す。

 強くなりたくて始めた空手。目の前の相手は敵で、倒さないと自分が倒されると思っていた。「相手をコントロールすることはできないし、その考えが相手を自分より下に見て、傲慢(ごうまん)になっていく」と説明する。

 ひたすらぶつかり合い、徹底的に稽古を続けることで、徐々に相手を認めて受け入れられるようになり、「誰でも分かり合える仲間になっていく」。「空手をする人たちは、空手を通して幸せになる道を見つける仲間と思えるようになった」と振り返る。

 空手での「学び」をビジネスで生かしてきた。13年に社長に就いたタイガー産業では全社員研修を企画。「社員全員が仕事を通して、家族を幸せにし、お客さまに喜ばれ、社会に貢献したい気持ちを持つべきだ」と呼び掛け、目標について徹底的に話し合った。その結果、会議などで、どちらの意見が正しいかといった対立が減り、互いを認め合う雰囲気が生まれ、社員が前向きになっていったという。

 目標を共有し、共に成長する喜びを「広く社会で生かしたい」と思い、今年3月に退職。現在は、人材育成の場で可能性を広げたいと活動を模索している。

 道場では子どもたちにどういった人間になりたいか目的を明確にさせて指導しているという。「大きな目標を持つと行動が変わる。行動が変われば、結果はおのずとついてくる」。技術も大事だが、人間性の向上に重きを置く。