名護市辺野古で新基地建設の反対行動を続ける住民は、翁長雄志知事が腰を上げるのを今か今かと待っていた。無理もない。現場では、海上保安庁の手荒い警備の下で本体工事に向けた作業が続き、けが人や逮捕者が相次いでいたのだから。

 知事選当選からちょうど3カ月目の16日、翁長知事は自らの権限を行使し、辺野古での一部作業の停止などを沖縄防衛局に指示した。埋め立て阻止に向けた県の取り組みの実質的第一歩である。

 政府は、事業主として環境アセスメント制度の趣旨を大切にし、環境保全に誠意をもって対処しなければならない立場にある。知事から指示を受けた以上、それに従い、県が27日から実施する現場調査に協力し、ボーリング調査の再開も見合わせるべきだ。

 翁長知事の誕生以来、安倍政権は「敵か味方か」の論理で新知事を冷遇し、選挙で示された民意を無視して問答無用の姿勢で工事を強行してきた。一国の政府が一県いじめの威圧的な姿勢をいつまでも続けてはいけない。

 ことの経過はこうである。

 沖縄防衛局は1月27日から、海上の立ち入り禁止区域を示すブイ(浮標)やフロート(浮具)を設置するため、重りとなる大型コンクリートブロック(10~45トン)を海底に沈める作業を始めた。

 ところが、大型ブロックの設置によってサンゴ礁が傷つき、一部のブロックは県が許可した区域の外に設置されている可能性があることが、市民団体やメディアの現場撮影などで明らかになった。

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 仲井真弘多前知事は昨年8月、沖縄県漁業調整規則に基づき、沖縄防衛局から申請のあった岩礁破砕を許可した。海底の岩石を掘削し、土砂を採取する作業のことである。 「公益上の理由により(県が)指示する場合、従うこと」との条件がついており、翁長知事は、この文言を根拠に停止を指示した。

 翁長知事が指示したのは新たなブロックの設置停止や、既設ブロックの移動停止、海底写真などの必要資料の提出-の3点。もし防衛局が従わなければ、27日からの現場調査結果を踏まえ、許可の取り消しも辞さない構えだ。

 沖縄防衛局は、昨年9月から中断しているボーリング調査を近く再開する考え。岩礁破砕の許可が取り消されれば、ボーリング調査に使用する仮設岸壁の建設など、埋め立て予定区域でのいくつかの作業が足踏みする。ブロック設置がほぼ完了しているため指示の実質的効果は薄いが、取り消しの効果は絶大だ。

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 政府が対話を拒否し、埋め立てに向けた工事を強行している以上、生物多様性の豊かな辺野古の海を守るため、県が法的手段を駆使して努力するのは、当然のことである。

 国際社会の共通課題になりつつある環境保護の「予防原則」とは、未然に防止することを基本にした考え方だ。政府は「予防原則」の趣旨を踏まえ、まず工事を中断すること。その上で、環境アセス後に明らかになった知見や、作業開始によって生じた事態を総合的に検証すべきである。