産経新聞が掲載した人気作家、曽野綾子氏のコラムが物議を醸している。「20~30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」などと書いたからだ

 ▼世界に名だたる悪政アパルトヘイト(人種隔離)を想起させ、人種によって住む場所を定めた政策を許容していると読める。同国の駐日大使らがこれを問題視した

 ▼抗議文を受け取った産経新聞は「一貫してアパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えだ」そうだ。まったくもって同感である。そうであれば「曽野氏の意見として掲載した」との釈明は、人権に配慮すべき編集権を放り出したに等しい

 ▼曽野氏は言論の自由を存分に謳(おう)歌(か)してきた。「集団自決(強制集団死)」論争でも知られる。数年前には「女性は赤ちゃんが生まれたら、退職してもらう」などと時計を逆戻りさせたような発言も重ねた

 ▼差別される側の身もだえるような悔しさや怒り、痛みを、異文化間で摩擦が起きたとしても相互に受け入れ合う寛容さの重要性を、理解しているとは言い難い

 ▼かつて沖縄の先輩たちが本土で差別的な扱いを受け、今は国策で構造的な差別を受ける地に住む者として、見過ごせない。(与那嶺一枝)