陸上自衛隊沿岸監視部隊配備の賛否を問う与那国町住民投票まであと1日に迫った。島の将来を左右する意思決定の機会といわれるが、法的な拘束力はなく、中谷元防衛相はすでに結果にかかわらず、配備を進める考えを示している。しかし、町の住民投票条例では「町長と町議会は結果を尊重し、住民意思が正しく反映されるよう努めなければならない」と定める。この後の作業にどう影響するのか。「賛成多数」「反対多数」となった場合、それぞれ想定されるケースを探った。(福元大輔)

自衛隊配備を問う住民投票で想定されるケース

■賛成多数 町議会の構成に変化

 賛成する住民らは過去2回の町長選で推進派の外間守吉町長が当選したことから「民意は出ている」と訴えてきた。2012年に反対する住民らの署名活動から始まった住民投票については「最後の壁」と捉え、「決着をつける」と精力的に集票活動に取り組む。

 「賛成」が過半数を上回れば、事業が一気に加速するのは間違いない。

 町長の協力姿勢がより強まるほか、これまで反対勢力が多数を占めていた町議会の構成が変化する可能性もあるからだ。町議6人のうち、陸自に対するスタンスは賛成3、反対2人、中立1人。賛成の糸数健一氏が議長を務めることで、本会議での採決は反対・中立派が3対2で上回る。

 ただ、中立の1人は反町長で野党的立場を貫くが、陸自には「住民投票の結果を尊重する」という考えだ。賛成多数になれば、賛成派に回り、賛否逆転につながることもあり得る。

 町議会は昨年10月、陸自施設の建設予定地内にある二つの町道廃止と簡易水道新設予算を否決し、町議会の影響力を示していた。残り2人の反対派を含め、町議らの対応が注目される。

 一方で、陸自配備には根強い反発が残る。監視レーダーの電磁波による健康不安は消えず、「陸自が来れば島を離れる」と訴える住民がいるのも事実だ。

■反対多数 町長リコールも視野

 反対多数の場合、外間町長は「(配備や関連工事に)非協力的な立場をとらざるを得ない」と明言する。粛々と進める姿勢を変えない政府との間で、難しい局面を迎えそうだ。

 防衛省はすでに10件、総額48億円の契約を結び、6月末までに造成工事を終える予定。その後、約26ヘクタールの土地に沿岸レーダーや庁舎、隊舎などを整備し、来年3月までに配備を完了する計画だ。

 町や町議会は2009年に島への陸自誘致を政府に要請した経緯がある。住民投票の時期が遅れたことで「動きだした事業を止められるのか」「基地だけが完成し、防衛予算の恩恵を受けられないのでは」と疑問視する声が聞こえる。

 反対する住民らは、陸自の土地のほとんどが町所有で、1年ごとに契約更新することから「造成段階だと、契約を打ち切ることが可能」と指摘。町長に「非協力的だけではなく、配備を阻止する行動に出てほしい」と求める。住民意思を尊重しない場合、町長の解職請求(リコール)に乗り出す可能性を示唆する。

 町議会の構成も反対派多数のままになる。陸自関連の議案は否決される公算が大きい。

 また、駐屯地ができたとしても、反対多数だと、島に移り住む自衛隊員や家族の懸念が高まりそうだ。