中学生のころ図書館で作家、星新一さんのショートショート「おーい、でてこーい」を読んだ。乾いたブラックな結末は衝撃的だった

▼台風一過の村で直径1メートルの謎の穴が見つかる話。発見した若者が「おーい、でてこーい」と呼び掛け、石ころを投げ込むが反応がない

▼どこまで続くか分からないほど深い穴は絶好の処分場となり、放射性廃棄物や政府の機密文書、実験動物の死骸など、厄介なごみが次々と持ち込まれる。誰もごみ問題など気に掛けず、経済成長を謳歌(おうか)していたある日、青空から「おーい」と声がして石ころが落ちてくる…

▼星さんの作品を今読み返すと、インターネットの出現や監視社会の到来など、現代を予見したかのような鋭い視点に驚く。放射性廃棄物の地下処分などのニュースを見るたび、深い穴の警告を思い出す

▼先週、原発から出る核のごみの最終処分で国の基本方針の改定案が公表された。政府は取り組みの強化を強調するが処分場所の見込みはない。「トイレがない」現状は変わらないままだ。たとえ処分場が決まったとしても、高レベル放射性廃棄物が無害になるには10万年かかるといわれる。誰が責任を負えるのか

▼10万年後の未来を生きる子どもたちがきっといる。そう信じるなら「負の遺産」を増やし続ける原発再稼働には賛成できない。(田嶋正雄)