2017年(平成29年) 9月23日

タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手

木村草太の憲法の新手(60)加計学園問題と国会召集 速やかな召集 立法化を

 加計(かけ)学園の問題は、一向に収まる気配がない。経緯を簡単に見ておこう。

 2016年11月9日、国家戦略特区諮問会議で、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」と決定された。17年1月4日、内閣府・文科省共同告示で、「平成30(18)年度に開設する」獣医師系養成大学を「一校に限り」認可するとされた。告示当日から1週間、事業者の公募が行われ、加計学園のみが応募し、選定された。

 「広域的に」、「平成30年度開学」という条件は、四国で建設予定地のボーリング調査などを既に進めていた加計学園に、極めて有利だった。文科省の内部文書からは、これらの条件が、官邸中枢の指示で設定されたことが示唆される。

 加計学園の理事長は首相の親友と言われている。首相やその側近が加計学園を優遇したのではないかと疑われるのもやむを得まい。もし、友人優遇の事実があれば、平等原則(憲法14条)に違反し、違憲・違法である。国会の国政調査権による事案の解明が求められよう。

 野党は通常国会でこの問題を厳しく追及していたが、会期の延長はされずに、6月18日に閉会した。そこで野党は、6月22日、憲法53条に基づき、内閣に対して「速やかに」臨時国会を召集するよう要求した。これを受け、国会各委員会の判断で閉会中審議は行われたが、依然として内閣は国会召集の義務を果たしていない。

 過去にも、内閣が国会の召集を不当に延期した例がある。安倍内閣は、15年末に日程的な余裕があったにもかかわらず、臨時国会を召集しなかった前科がある。こうしたことが繰り返されては、国会による行政監視は十分に機能しない。

 なぜ憲法に基づく臨時国会の召集請求が無視されるのか。それは、憲法に明確な期限や、召集を強制する手段の定めがないからだろう。この点、12年の自民党憲法改正草案は、憲法53条に「20日以内」の召集を義務付ける期限規定を盛り込んでいる。自民党を中心とした内閣の横暴が、自民党草案の必要性を裏付けるというのは皮肉だが、この提案は重要だ。臨時国会の召集請求をないがしろにする前例がこれ以上積み重ならないよう、期限規定を設ける改憲も真剣に検討せねばならないだろう。

 また、手間のかかる改憲手続きではなく、国会法に召集の期限規定を設ける道もある。これについては、「憲法が内閣に与えた国会召集権を法律で制限することは違憲だ」との議論も考えられなくはない。しかし、一般的な学説は、「十分に速やかな召集」を必要としており、政府の憲法解釈でも「必要な合理的な期間を超えない期間内に」召集しなければならないとしている(03年12月16日外交防衛委員会の秋山収内閣法制局長官答弁)。憲法の要求する「合理的な期間」を具体化し明文化する立法は、違憲ではなく、むしろ、憲法の趣旨から望ましいだろう。

 自民党自ら「20日以内」と提案したのだから、その立法を拒む理由はない。次の臨時国会で、早期に立法すべきだ。(首都大学東京教授、憲法学者)

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