労働界の反対で2年以上審議入りできなかった「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を柱とする労働基準法改正案が、成立に向けて動きだした。「残業代ゼロ法案」と批判してきた連合が、容認へと舵(かじ)を切ったからだ。

 高収入の一部専門職が対象とはいえ、「働き方改革」に矛盾する制度である。連合の突然の方針転換も不可解に映る。

 高プロは年収1075万円以上の金融ディーラー、研究開発などの専門職を労働時間の規制や残業代支払いの対象から外し、仕事の成果に応じた賃金にする仕組みだ。

 労基法が労働時間の上限を1日8時間、週40時間と定め、超えた場合は残業代支払いを義務付けているのは、労働者を守る目的からである。残業代は企業に長時間労働を抑制させるブレーキともなっている。

 連合の神津里季生会長は安倍晋三首相に健康確保措置を強化する修正を求めた上で、要請受け入れを条件に容認する考えを表明した。

 連合が求める修正は「年104日以上の休日」を義務付けるほか、終業から始業まで一定の休息を設ける「勤務間インターバル」、働く時間の上限設定、連続2週間の休日取得-などから一つを労使に選ばせる内容だ。

 労働者の立場は弱く、会社に求められれば長時間労働は避けられない。規制の枠外となれば、労働基準監督署の監視など外部の目も届きにくくなる。

 健康確保措置の実効性が見通せない中、残業増加や成果主義の強まりが懸念される。

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 政府は秋の臨時国会で、残業規制や同一労働同一賃金を盛り込んだ働き方改革関連法案と高プロ創設を一括審議しようとしている。

 神津会長が「やむにやまれずという思いだ。あんな制度はいらないとの考え方は変わらない」と語るのは、悲願である残業規制を導入するための政治的駆け引きということなのか。

 一方、政府が連合の要請を受け入れる方針を示しているのは、労働者保護の色彩の強い法案と抱き合わせることで、批判を和らげたいとの思惑からだろう。

 しかし罰則付きの残業の上限規制や非正規労働者の処遇改善のための同一労働同一賃金など働く人を保護する法案と、労働時間を規制する法案では整合性を取るのが難しい。

 そもそも一括審議にはなじまない。

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 「ホワイトカラー・エグゼンプション」の名で導入が議論された10年以上も前から、連合は「残業代ゼロ法案」として反対を続けてきた。

 それだけに今回の方針転換は唐突で、傘下の労働組合から激しい批判を浴びている。重要な判断にもかかわらず、組織内部の調整など決定に至ったプロセスにも疑問の声が上がる。

 電通の違法残業事件をきっかけに、働き方を見直す機運が高まっている。

 制度導入にこのまま突き進めば、働く者の代表である連合の存在意義は揺らぐ。