皆さまは「リビングウィル」という言葉をご存じでしょうか。日本尊厳死協会の説明によれば「治る見込みがなく、死期が近いときの医療(延命処置)についての希望をあらかじめ書面に記しておくもの」とされています。

 私の勤める施設では、認知症などの疾患を患い介護の負担が大きいために自宅療養が困難となった方々のケアをさせていただいています。施設に入所されている療養者の中には、療養者ご自身で治療方針について判断し、気持ちを伝えることが困難な方も多く、治療方針についてご家族とともに療養者の気持ちを推察することも多々あります。

 なぜなら、治療の中には療養者に苦痛を与え続け、さらには療養者のご家族にも心の痛みを与え続けるものがあるからです。治療で期待される効果と治療による苦痛をてんびんにかけた判断は個々の死生観にも左右されるため、決定にはご家族と私たち医療スタッフとの慎重な話し合いが必要になります。

 もしそこに「リビングウィル」があればご本人の意思を尊重でき、さらにはご家族の負担の軽減にもつながるだろうと予想できます。1970年代に米国で必要性が言われはじめましたが、次第に欠点も見えて来ました。「リビングウィル」では自分がどこまでの治療を望むのかを具体的に記しておく必要がありますが、事前にあらゆる状況を想定してもれなく指示することは不可能に近いことでした。その欠点を補うために誕生したのが「医療に関する永続的代理権授与」で、自分の代わりに誰に判断してもらうかを文書で指示しておくものです。

 欧米では「リビングウィル」に加え「医療に関する永続的代理権授与」の二つを合わせて「事前指示」と言われています。これまでさまざまな事前指示書が開発されましたが、私がオススメしたいのは「5つの願い」というものです。(1)自分で意思決定ができなくなった時、誰にしてもらいたいか(2)自分が受けたい、受けたくない医療行為はどのようなものか(3)自分が心地よく過ごすためにしてほしいことはどのようなことか(4)自分が人々に求める介護の内容(5)自分が愛する人々に知ってもらいたいこと-について記すものです。インターネットでサンプルが見られますので参考にされてはいかがでしょうか。

 いつかは訪れる人生の終末期をどのように過ごしたいのか、この文書を読んで家族で考えるきっかけとしていただければ幸いです。(山入端浩之 北中城若松病院)