街角で「ターイユあります」の看板を見かけなくなって久しい。ターイユはフナのことで、子どものころ、シンジムン(煎じたもの)を「体にいい」と飲まされた。熱冷ましにもなるという

 ▼牧志公設市場でウナギやコイ、スッポンなどを扱う大城うなぎ店は今でもターイユを販売している。那覇市内の市場で、ターイユを売る最後の店だ

 ▼開発が進み、川などでターイユの数が激減。さらに、販売用のターイユを一本釣りする人も高齢化が進み、ほとんどいなくなった。店主の新垣スミ子さん(69)によると、月に1度か2度、20匹程度が入荷されるだけだ

 ▼お客は70、80代の女性がほとんど。風邪がはやる冬場が最も売れるシーズンだが、「売りたくても売るものがない」状態。なければ、客も遠のく。「時代の流れでしょうね。ターイユシンジは過去のものになりつつある」

 ▼沖縄にはクスイムン(薬もの)の料理が多い。薬もない時代、先人は食物に宿る薬効を見いだし、生活の知恵で伝えた。これは医食同源につながる

 ▼「体調にいいと、遠くから買いに来る人もいる。体が続く限り、売り続ける」と新垣さん。生きたターイユとニガナを煎じるだけの素朴なものだが、食で家族の健康を守りたいという真剣さがうかがえる。苦手だったターイユシンジも今は懐かしい。(与那原良彦)