これでは自衛隊の海外での活動が際限なく拡大する恐れがある。専守防衛に徹し、平和国家として歩んだ戦後日本のあり方が大きく変わることにならないか。

 集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ昨年7月の閣議決定を受けて、自民、公明両党が先月から進めている安全保障関連法案をめぐる与党協議のことだ。

 政府・自民党は、自衛隊の海外派遣の歯止めを緩めるような提案を次々と繰り出している。そのため、論点が拡散している上に、与党の密室協議である。3月下旬までに基本方針をまとめるというが、国民の納得を得られるような内容になるのか、懸念を拭えない。

 与党協議での主なテーマは武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」や武器使用基準の見直し、邦人救出のための自衛隊派遣-など多岐にわたる。

 その中でも懸念されるのは周辺事態法の抜本改正である。事実上、自衛隊の活動を制限していた「周辺事態」という地理的概念をなくし、活動範囲を大幅に拡大することを狙うものだ。支援対象国も米軍以外にも広げる。

 米軍など他国軍の後方支援のため自衛隊の海外派遣を随時可能とする恒久法を制定する方針も示した。これまで他国軍の後方支援は期限付きの特別措置法で対処してきたものである。

 周辺事態法の改正は、法律の根幹を「骨抜き」にするものだ。恒久法は、自衛隊をいつでも海外のどこにでも派遣できるようになる可能性があり、極めて危うい。

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 安倍政権はなぜこれほどまでに自衛隊の活動拡大に前のめりなのか。夏に予定している日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定をにらんでいるからだ。

 昨年10月の中間報告では地球規模のあらゆる事態に日米協力で対処する方針を打ち出した。

 しかし、対米支援の地理的撤廃や地球規模への拡大は、重大な問題を含んでいる。

 海外での武力行使を禁じた憲法に違反するだけでなく、日米安全保障条約が許容する防衛協力のあり方を逸脱する可能性もある。

 日米安保条約第6条は米軍の駐留目的を「日本の安全に寄与し、極東における平和、安全の維持に寄与するため」と明記している(極東条項)。

 米軍と自衛隊が地球の裏側も含めた協力体制を構築することは、この条文と整合性がとれないのである。

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 与党協議では、自衛隊の海外での活動の制約を解こうとする政府・自民党と歯止めをかけたい公明党との溝が埋まっていない。

 昨年閣議決定した集団的自衛権の行使容認をめぐり自民、公明両党の解釈のずれがいまだに残されていることが背景にある。中東のホルムズ海峡での自衛隊の機雷掃海についても、自民党と公明党の見解は割れている。

 日本の安全保障政策を大きく変える可能性ある与党協議である。「平和の党」の看板を掲げる公明党にとっても真価が問われている。