報道が事実なら、稲田朋美防衛相は防衛省・自衛隊の組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)を了承し、国会でも虚偽答弁を重ねたことになる。内閣改造で本人を辞めさせれば済むというような軽い話ではない。

 共同通信社が報じたのは、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自衛隊部隊の日報を巡る問題である。一連の経過はこうだ。

 昨年9月、フリージャーナリストが日報の情報開示を請求したのに対し、防衛省は同12月、「(陸自が)廃棄していた」として不開示を決定した。

 その後、統合幕僚監部に日報の電子データが残っていたことが判明。今年1月には、廃棄されたはずの陸自にもデータが保管されていたことが分かった。

 統幕でみつかった日報データは2月に一部黒塗りで公表された。陸自のデータについては、隊員個人が収集したもので公文書に当たらない、と判断。「事実を公表する必要はない」との方針を決め、データは消去された。

 2月15日、稲田防衛相や黒江哲郎事務次官、岡部俊哉陸上幕僚長ら最高幹部が出席し、緊急会議が開かれた。その席上、陸自に保管されていた事実を非公表とする方針が幹部から伝えられ、稲田氏も了承したのだという。

 稲田氏は「隠蔽を了承したとか非公表を了承したとかいう事実は全くない」と報道を完全否定している。

 ならば国会は、会議に参加した関係者を招致し、真相を徹底究明すべきだ。

■    ■

 3月16日の衆院安全保障委員会で、稲田氏は、一連の経緯の報告を受けていない、と主張。「改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善したい」と答弁していた。

 報道が事実なら稲田氏は、組織的隠ぺいに加担したことによってシビリアンコントロール(文民統制)を空洞化させ、国会での虚偽答弁によって国民を欺いたことになる。

 稲田氏は、2月15日の緊急会議の2日前にも、電子データが保管されていた事実などについて、陸自側から報告を受けていたという。

 日報問題については現在、防衛相直轄の防衛監察本部が特別防衛監察を実施しているが、ここまで疑惑が深まった以上、防衛監察本部だけに真相究明をまかせるわけにはいかない。

 内閣改造で稲田氏を交代させるだけなら、単なるトカゲの尻尾切りである。問われるべきは、任命権者である安倍晋三首相本人の説明責任だ。

■    ■

 この国の政治は、安倍官邸のおごりと、官邸の顔色ばかりうかがう官僚の過剰な忖度(そんたく)と、木で鼻をくくったような国会答弁に満ちている。

 安倍首相の答弁姿勢や菅義偉官房長官の会見での説明姿勢は、国民の疑問に正面から向き合い、丁寧に答えているとはとても言えない。官僚も然り。安倍内閣に対する支持率の急落は国民の怒りの表れである。

 「加計学園」問題と「日報隠蔽」問題は、国会が本来の監視機能を発揮し、権力の専横をただすことができるかどうかの試金石である。