放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が設立から10年を迎えた。政府の介入を防ぐためにつくられた組織の歩みは、放送局の自主・自律を巡るせめぎ合いの歴史でもある

▼2007年に情報番組「発掘!あるある大事典2」の捏造(ねつぞう)問題を受けて、当時の菅義偉総務相が介入をもくろみ打ち出した放送法改正がそもそものきっかけ。検証委が放送の「独立性」を担保する砦(とりで)となり、押しとどめた

▼15年にはNHKの「クローズアップ現代」のやらせ疑惑を巡り検証委は、NHK側を厳重注意した総務省や事情聴取した自民党を「圧力」と批判。安倍晋三首相は「BPOは法的な機関ではない」と反論した

▼検証委はあくまで第三者機関として助言をする立場であり、そこに強制力は伴わない。だからこそ放送の自主・自律を保障するのが政府の役割であるはずだ

▼テレビに限らず、マスメディアを取り巻く環境は、とりわけ「政治的公平性」への視線が厳しい。設立以来、委員長を務める川端和治弁護士は「日本の表現の場がおかしくなっている」と苦言を呈し「マスコミが萎縮している。事実を掘り出し、伝えている限りは何も心配は要らない」と語る

▼インターネットを中心に「偏向報道」の批判が沸騰するのが珍しくなくなった時代。報道の使命を肝に銘じたい。(西江昭吾)