「夫婦は夫か妻の姓を名乗る」「女性は離婚後6カ月間再婚できない」。家族や夫婦のありようや価値観が多様化する中、夫婦の「形」に関わる民法の二つの規定に対し、最高裁が初めて憲法判断を示す見通しとなった。

 両規定が憲法違反かどうか争われている2件の訴訟について、最高裁は大法廷で審理すると決めた。

 両規定は、古い家制度をよりどころとしたものだ。個人の尊厳や女性の権利を不当に侵害しているとして長年、国内外から批判を受けてきた。最高裁には、社会の変化に即した判断を求めたい。

 女性の社会進出が進んでいる。結婚し、従来通り配偶者と同じ姓を名乗ることを望む人がいる一方で、仕事上の支障などから姓が変わることに抵抗を感じる人は少なくない。結婚までに築いたキャリアや人脈が途切れる恐れがあるためだ。長年慣れ親しみ愛着のある名前が変わり、自己喪失感を味わう人もいる。

 いずれかの姓を名乗るとの規定は中立のように見えるが、現実には長年の慣習などから96%の夫婦で妻が姓を改めている。女性に負担を強いる制度だと言えよう。

 通称という形で、職場での旧姓使用は浸透してきた。だが、健康保険証など戸籍名しか使えないものがある。使い分けに混乱や煩わしさを感じ、法的に離婚したり、最初から婚姻届を出さずに、事実婚として暮らす夫婦もいる。

 旧来の制度では、実社会の流れに対応できなくなってきているのだ。

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 過去に規定見直しの動きはあった。

 法制審議会は1996年、(1)選択的夫婦別姓の導入(2)再婚禁止期間の見直し(3)結婚していない男女間の子(婚外子)の相続分を法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする規定の撤廃-を答申した。

 法務省は、これを受け民法の改正法案を準備したが、法案の提出には至らなかった。保守派の議員から「伝統的家族観が崩れる」といった反対意見が強かったためだ。

 婚外子の相続規定については2013年、最高裁の「法の下の平等を定めた憲法に反する」との判断を受け、ようやく改正された。だが、他の規定に関し、立法府である国会は放置したままだ。

 国連の女性差別撤廃委員会は、日本に再三、撤廃を要請してきた。日本学術会議も昨年6月、「夫婦同氏の強制は人格権の侵害」と批判し、改正を提言した。社会の関心も高い。

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 再婚禁止規定は、子どもの父親を推定する際の混乱を防ぐ目的があるが、現在はDNA鑑定での特定が可能だ。女性だけに禁止期間を設ける必要性に欠ける。

 それよりもこの規定のために、DVなどで前夫の元から逃げた女性が、別の男性との間にできた子どもの出生を届けない事例の方が問題だ。戸籍上前夫の子になるのを避けるためで、無戸籍児を生む要因となっている。

 制度と社会のずれの是正は急務だ。司法だけでなく国会も真摯(しんし)に向き合ってもらいたい。