重要無形文化財保持者(人間国宝)に、沖縄の伝統芸能「組踊音楽太鼓」の比嘉聰さん(65)が認定されることになった。

 「曲趣を的確に捉え、端正で抑制の効いた演奏が組踊を豊かに表現する」として高く評価された。

 比嘉さんを祝福するとともに、県民みんなで喜びを分かち合いたい。

 沖縄からは故人を含め12人の人間国宝が誕生することになるが、戦後生まれは初めてだ。組踊関係者では5人目。太鼓は故島袋光史さん以来で、師弟で人間国宝に認定されることになる。

 組踊は重要無形文化財でユネスコ無形文化遺産にも登録されている沖縄の宝である。 組踊音楽は地謡と呼ばれ、歌三線、箏、太鼓、笛、胡弓で構成される。

 太鼓は、場面の状況や人物の心情を表す歌三線を補助し、音楽全体の表現に深みを与える。立ち方(踊り手)の動きにきっかけを与えたり、激しい感情や物語の展開を表現したりする。組踊には欠くことができない存在だ。

 組踊で太鼓が前面に出るのは「執心鐘入」のクライマックス。鬼女と僧たちが対決する場面では太鼓が激しく鳴り響き、臨場感を醸し出す。一方で、太鼓は強弱や緩急の表現しかないため、打たない時の間の取り方の方が大切だともいわれる。高度な技量が求められるゆえんである。

 人間国宝の認定に比嘉さんは「夢にも思わなかった。先輩方がたくさんいる中で自分でいいのかなと非常に恐縮している」と喜びを表現した。

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 比嘉さんは1952年、旧久志村(現名護市)で生まれ、現在那覇市在住。

 71年に琉球大学農芸化学科に入学した。講義の移動の合間に聴こえてくる三線の音色に引かれて郷土芸能研究クラブに入った。72年には太鼓を島袋さんに、琉球古典三線を故棚原忠徳さんに師事した。

 卒業後は、仕事をしながらの二足のわらじで、いずれも師範免許を得た。太鼓と三線で師範の実力を併せ持つのはまれで、組踊の深い理解につながっているのだろう。

 比嘉さんを「島袋さんの作品」と表現する兄弟子がいる。島袋さんは沖縄伝統太鼓の打法を体系的に確立。その薫陶を受け、正統に受け継いでいるという意味だ。

 比嘉さんは「太鼓持ち」をしながら音を追い、見ながら学んだという。島袋さんの「ウーティクーヨー(追ってきなさい)」の言葉通り、抜きんでた才能と厳しい修練を積み重ね、実現した。

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 後進の育成にも熱心だ。

 国立劇場おきなわ組踊研修の太鼓講師を長年務めている。96年からは県立芸術大学の非常勤講師を続け、2015年には音楽学部(琉球古典音楽コース)の教授に就任した。太鼓の演奏者が少なく、もっと育てなければ、との思いを強くしている。

 自身は太鼓を前面に押し出した実験的な独演会にも挑戦している。今回の認定をきっかけに若い演奏者たちが比嘉さんの後ろを追い、沖縄伝統芸能がさらに発展することを期待したい。