2017年(平成29年) 12月18日

タイムス×クロス コラム

沖縄基地問題 そびえ立つ「ワシントンの壁」 ジャーナリスト・屋良朝博のロビー活動記

屋良 朝博
屋良 朝博(やら ともひろ)
フリージャーナリスト

1962年北谷町生まれ。フィリピン大学を卒業後、沖縄タイムス社で基地問題担当、東京支社、論説委員、社会部長などを務め2012年6月退社。「砂上の同盟」で平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞。沖縄国際大学非常勤講師。新外交イニシアティブ評議員。

 新外交イニシアチブ(ND)は7月12日、米ワシントンでシンポジウムを開催し、沖縄の米軍基地問題を解決する政策提言を発表した。おそらく日本側から具体策が示されたのはこれが初めてだ。また上下両院で多くの議員事務所を訪ねて政策提言を売り込むロビー活動を行った。確かな手応えを感じつつも「ワシントンの壁」を仰ぎ見るような思いがした。

 現地では米シンクタンク「東西センター」(本拠地ハワイ)が提携し、シンポの会場を提供してくれた。筆者も提案者の1人としてNDの政策提言を説明。普天間飛行場を使い、その代替施設の辺野古新基地を使い、東村高江のヘリ着陸帯を使って訓練するのが海兵隊であるから、海兵隊を県外・国外へ移転できさえすれば、辺野古のサンゴ礁は守られ、森に囲まれた高江は静寂を取り戻す。ついでに主に海兵隊が使う那覇軍港を浦添西海岸に移転する必要もなくなる。在沖米軍基地の7割を占有している海兵隊が基地問題の大元なのである。

米国会議員秘書に沖縄問題解決の政策提言を説明する(右から)屋良朝博、猿田佐世の各氏=米議員会館、ワシントン

※NDの政策提言を報じた記事はこちら
海兵隊31MEUの県外移転、辺野古新基地の代案に NDがアメリカで提言

<政策提言>

 政策提言は元防衛官僚で官房副長官補を務めた柳沢協二氏、中京大学の佐道明広教授(国際政治)、東京新聞論説委員の半田滋(論説兼編集委員)、そして筆者の4人が3年がかりで議論を重ねてまとめた。米軍再編による海兵隊の新配置と役割、今日的な安全保障課題について分析し、その上で沖縄から海兵隊の実戦部隊を撤退させる方法を導き出した。

 「米軍出て行け」という抗議ではなく、日米両政府に対してより良い方策を検討すべきだと提案している。辺野古埋め立てを強行すれば沖縄の民意は米軍に一層厳しくなり、極東最大とされる嘉手納飛行場の運用にも影響を及ぼし、日米関係どころかアジア太平洋地域の安全保障さえ揺るがす事態に発展しかねない、と警鐘をならしている。

 ワシントンのシンポでは半田氏と筆者、NDの猿田佐世事務局長が発表した。

<提言骨子>

1)再編後に残る海兵隊の実戦部隊「第31海兵遠征隊(31MEU)」の全面移転

2)日米ジョイントMEU for HA/DRを創設 (HA=人道支援、DR=災害救援)

3)高速輸送船、駐留軍経費の移転先適用

4)中国軍も含めアジア太平洋諸国のHA/DR連絡調整センターを設置


 米軍再編で海兵隊は戦闘力が4分の1に縮小され、主力はグアムへ移転することがすでに決まっている。残るのは司令部と31MEUという小ぶりの部隊だけになるが、この部隊でさえ長崎県佐世保に配備されている揚陸艦で年の半分以上を洋上展開している。艦船に隊員を乗せる場所が沖縄なので、電車に例えると始発駅が長崎、乗車駅が沖縄、目的地はアジア太平洋全域になる。再編枠をもう少し広げて、31MEUを沖縄から別の場所へ移転することは乗車駅を替えるだけであり、防衛態勢や安保体制の見直しといった仰々しい話ではない。

 31MEUは人道支援、災害救援を軸とした活動を通して諸外国との連携強化に力を入れている部隊だ。アジア諸国で国際共同訓練を企画し、フィリピンやタイで毎年定期的に開催される訓練には数十カ国が参加する。中国も近年、積極的に参加していることは日本の中ではあまり知られていない。

 冷戦後の安全保障課題を象徴するのが、「9・11」「3・11」と言われており、テロ対策、災害救援に対して国際社会の共同対処システムの構築が求められている。貧困対策、密輸、麻薬取引、感染症対策などの人道支援がテロを抑える効果が期待されるほか、災害救援が遅れると政情不安になりテロに利用される恐れもある。

 こうした全人類的な課題に取り組むシステムを日米間で構築し、31MEUが沖縄から他所へ移っても機能できるよう日本も体制を整備すべきだろう。それが「日米ジョイントMEU for HA/DR」の提案だ。

 そしてHA/DRの国際連絡機能を沖縄に置き、中国を含む諸外国の担当者が沖縄に集い、アジアの安定と平和について議論する。冷戦の残滓(ざんし)である軍事拠点としての沖縄はアジアの平和の架け橋になる。そして日本も米国の軍事的庇護に身を委ねる戦後の生き方を改めて、あくまでもソフトパワーとしてアジア安保の礎となる努力をすべきだ。

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