日台漁業協定の対象水域で次年度の操業ルールを決めるため東京都内で開かれていた日台漁業委員会が、7日決着した。

 最大の焦点だった漁船同士の操業間隔の問題では、日本側が強く求めていた対象水域全体で漁船間の距離を4カイリ(約7・4キロ)離すというルールの適用は、合意に至らなかった。

 昨年1月に合意したルールでは、クロマグロの好漁場である八重山北方の三角形の水域と久米島西方の「特別協力水域」内の北半分を日本の漁法で操業できる水域とし、南半分の水域を台湾の漁法が適用されるエリアとするなど一定のルールを定めた。

 今回は、日台で昼夜交代で操業し、日本の操業ルールが適用される八重山北方の三角水域を拡大し、同様の水域を与那国島の北方に新たに設置することで合意した。

 台湾側から一定の譲歩を引き出した形だが、日本側がこだわったのは、あくまで漁船の間隔を4カイリ離す操業ルールの全水域への適用だった。

 漁船同士の衝突や、はえ縄など漁具が絡まるなどのトラブルを避けるため4カイリを主張する日本に対し、台湾側は操業できる漁船数が減り、漁獲量の減少につながるとして、1カイリ(約1・85キロ)で十分だと主張していた。

 協定対象水域では、双方の漁法による操業が混在する形となっており、規模の大きい台湾船とのトラブルを懸念する県内漁業者は、操業を見合わせている状況だ。

 日本側の主張は操業の安全性確保の観点からもきわめて切実な問題である。

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 尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)で台湾漁船の操業を認めた日台漁業協定は、2013年4月に締結された。日台漁業交渉は1996年から行われていたが、急展開したのは安倍政権になってからだ。

 日本政府は、中国と対立する尖閣諸島問題で優位に立つため、同様に尖閣諸島の領有権を主張する台湾に接近し、大幅に譲歩する形で、EEZ内での台湾船の操業を容認した。

 協定は沖縄の頭越しで締結された上に、当初は操業ルールもないままの「見切り発車」だった。県内漁業者にとって、不本意な協定締結で好漁場を奪われたに等しいものだ。漁業者の声に耳を傾けることなく発効した協定の水域は本来、沖縄の漁民が自由に操業できた場所である。

 操業ルールは、今後も毎年見直されることになっている。県内漁業者の利益が確保される仕組みにしていくことが政府の責務である。

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 安倍政権は、尖閣諸島問題をめぐる中国の海洋進出に対抗するため、島しょ防衛を目的として自衛隊を南西諸島に配備する計画を進めている。

 尖閣海域は漁業者の生活圏であり、軍事的な緊張がエスカレートすることがあってはならない。

 本来、漁民同士が納得するルールを優先すべきなのに、官邸主導の性急な「合意」がひずみを生んでしまった。漁業者を国策の犠牲にしてはならない。