「神様みたいな人でした。島の子どもは全部、自分の子どもみたいにかわいがってくれた」。伊江村の山城啓子さん(76)は懐かしんだ。視線の先には60年前の自分。写してくれたのは故・阿波根昌鴻さん

▼阿波根さんは1955年ごろ、島で初めてカメラを手に入れ、住民のポートレートを撮った。子守をする少女、馬車の青年たち。みんな阿波根さんと目を合わせ、信頼しきった表情だ

▼初公開の写真展が8日まで、島で開かれた。展示された50点はごく一部で、全体では約1200点ある

▼阿波根さんが同時期に撮影した米軍による土地接収と抵抗運動の写真は、よく知られている。数はほぼ同じ、約1200点。阿波根さんにとって、住民の笑顔とそれを守る運動は、同じ重さだったのだろう

▼米軍は絶対の権力を振るい、まだ中に人がいる家を焼き払った。そんな中、阿波根さんは「人間性においては、農民が軍人に優(まさ)っている自覚を堅持し、教え導く心構え」を説いた

▼「さんしんの日」の4日、米軍キャンプ・シュワブゲート前で、三線演奏者の雨よけテントを県警機動隊が撤去してしまう出来事があった。それでも「かぎやで風」は鳴り続け、機動隊員をも包んだ。暴力より人間力。阿波根さんの抵抗の信念が、60年後の新基地建設反対運動にも受け継がれている。(阿部岳)