川崎市の中1男子殺害事件で、亡くなった中1男子(13)の母親が出したコメントが重く響く。息子を失ったつらさだけでなく、自責の念や母子家庭のしんどさが伝わる文章に、「支援が必要だった」と悔やむシングルマザーは多い。

 「優しい顔で寝ている姿を見ると、本当に死んでしまったのか分からなくなります」。悲しみが記された文章は、被害者の通夜の後、弁護士を通して発表された。

 被害者は、逮捕された18歳少年とクリスマスのころゲームセンターで知り合ったという。年上グループと付き合いだして以降、今年1月からは学校へ行っていない。

 離婚後、病院などで働きながら被害者を含む5人の子どもを育ててきた母親は、悔恨の言葉をつづる。

 「学校へ行くよりも前に出勤しなければならず、遅い時間に帰宅するので、日中、何をしているのか十分把握することができませんでした」「学校に行かない理由を十分な時間をとって話し合うことができませんでした」 

 殴られて顔にあざができた息子の異変に気付かなかった母親を責める声もあるが、「家ではいたって元気だった」という。

 きょうだいの多い被害者は、家族のために働く母親を気遣ったのかもしれない。母親は母親で、仕事と家事に追われ、子どもと接する時間がとれなかったのだろう。

 事件の背景に、ひとり親家庭が抱える問題が見える。

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 「根っこにあるのは貧困。一人で頑張る母親へのサポートが必要」「母親が気軽に相談できる仕組みを」

 シングルマザーやその支援団体から声が上がっている。 5年ごとに実施される厚生労働省の「全国母子世帯等調査」(2011年度)によると、母子家庭の母親の平均年間就労収入は181万円とかなり低い。親など同居親族の収入を加えた世帯収入291万円で比較しても、子どもがいる全世帯の平均の半分に届かない。

 調査では、働く母親の11%が帰宅時間が午後8時を超え、12%が帰宅時間が定まらないと答えている。

 経済的にも、時間的にも余裕のない母子家庭の実態が浮かび上がる。

 「働いても貧困」という状況や、貧困の連鎖という問題からも分かるように、ひとり親世帯の親と子を支援する制度は圧倒的に不足している。

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 殺人容疑の年長の少年たちと、被害者のつながりは、まだ分からないことが多いが、先輩後輩という上下関係の中で暴力を受けていたのは確かである。

 暴力で絶対的服従を強いる非行少年グループの問題も無視することはできない。遊び仲間や先輩を頼って集団化する子どもたちは、家庭や学校、社会に居場所がないケースが多いからだ。

 被害者の悲痛な「SOS」が届かなかった理由を、ひとり親世帯への支援や、困難を抱える少年たちの居場所づくりという視点からも探るべきである。