政府は、米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古の新基地建設に向けたボーリング調査の掘削作業を半年ぶりに再開した。新基地建設に反対する翁長雄志知事が誕生して以来初の掘削作業だ。政府は沖縄の民意に耳を傾け、工事を中止するべきだ。

 菅義偉官房長官は工事再開について「埋め立て工事の許可を受けてその準備が整ったから、ただ粛々と開始しただけ」と従来の見解を繰り返し、正当性を強調した。

 菅氏は工事再開の根拠として、前県政の埋め立て承認や岩礁破砕許可に加え、「16年前の県や名護市の同意」まで持ち出し、過去の承認や同意は法的に覆せないと強弁している。

 埋め立て承認を批判し、新基地建設に反対する候補者が勝利した昨年の知事選や衆院選などの結果に目を向けないばかりか、16年前の同意は当事者や埋め立て案が異なり現行計画とつながらない。菅氏の見識を疑わざるを得ない。

 調査再開に向けて、政府は5日にフロート(浮具)などを固定する大型コンクリートブロック2個を米軍キャンプ・シュワブ沖の海へ投下した。翁長知事が、許可区域外の岩礁破砕を疑い作業の一部停止を求めた指示違反の可能性もある。

 民意や知事の指示を無視し続け、無理を通せば、いずれ道理が引っ込むとでも考えているのだろうか。今後、政府は深場12カ所でボーリングを実施し、300メートル級の仮設岸壁の設置も予定する。今夏の埋め立て着工に向けて強硬姿勢を崩していない。

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 前県政の埋め立て承認を検証する第三者委員会の審査が終わるまで作業の中断を求めていた翁長知事は、工事の再開に「大変遺憾」と憤りを発信した。岩礁破砕の許可をめぐるシュワブ沖の臨時制限区域内立ち入りを、米軍が「運用上の理由」で拒否したことも「不合理極まりない」と憤慨している。

 制限区域内は(1)承認前は自由に航行できた(2)海上保安庁の船が現在も航行-ことを考えれば、運用上の理由は納得し難く県調査を妨げる意図以外に考えにくい。

 日米地位協定では一定の条件を満たせば、日本側が米軍施設や区域に立ち入りを求めれば、米軍が「妥当な考慮を払う」と規定している。

 しかし、これまで合理的な理由もなく県や市町村の立ち入りが認められないケースがあり、今回も制限区域の海域で県民に見せてはならない「不都合な真実」があるのかと疑いたくなる。

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 翁長知事は調査再開を受けた会見で「あらゆる手法を駆使して」という言葉を使い、新基地建設の阻止を強調したが、具体性に乏しい。

 岩礁破砕の許可では(1)申請外の行為(2)公益上の事由による知事の指示に従わない-場合、許可取り消しも可能と条件付けている。許可区域外で大型ブロックを設置した可能性や停止指示に従わないブロックの追加投下など、許可取り消しも含め、判断を急ぐべきだ。政府と信頼関係が築けない中、作業だけが進むことはもう見過ごせない。