娘にピュアな片思いを続ける父親たちへの賛歌。仕事もプライベートもギリギリ。それでも必死で立ち向かう勝ち気なキャリアウーマン、イネスは最近ちょっとお疲れ気味。そんな娘の窮地を救おうと差し伸べられた父親の愛の手は常に空回りで、ため息とともに振り払われる。

「ありがとう、トニ・エルドマン」の一場面

 あの手この手を尽くしても想像の半分も喜ばない娘を相手に、届かない「I LOVE YOU」を叫び続ける懲りない父。貴方以外の男に愛されたいのに、貴方ほどに愛してくれる男もいない…。振り払う度に辛くなるのに何度も差し伸べられる無限の愛は、振り払う側の罪悪感や自己嫌悪は完全無視。

 「心当たり」しかないこの風景に、世の娘たちは、自らの父への悪態を思い出し、申し訳なく思うことでしょう。だからといって何かが大きく変わるわけではないけれど。(桜坂劇場・下地久美子)

桜坂劇場であすから公開