政府は、企業が長期にわたって派遣社員を雇用できるようにする労働者派遣法の改正案を閣議決定した。原則3年となっている企業の派遣労働者受け入れ期間の制限をなくすことが柱である。

 本来なら「臨時的・一時的」な仕事への対応であるはずの労働者派遣法の原則を大きく転換するものだ。派遣労働が常態化し、雇用の質の低下につながる懸念が拭えない。

 同法案は昨年の通常国会と臨時国会に提出されたものの、条文のミスや衆院解散でいずれも廃案になった。政府は3度目の国会提出で成立を目指し、9月1日から施行する予定だという。

 現行法では、派遣労働者の受け入れは秘書や通訳など専門性が高い26業務は期間制限がないが、その他の一般業務は最長3年としている。

 改正案では、専門と一般の業務の区分をなくし、1人の派遣労働者が同じ部署で働く期間を3年に制限するルールを設ける。ただし、企業は働く人を交代させれば、3年を超えても同じ部署で派遣労働者を受け入れ続けることができるようになる。

 つまり企業にとっては、3年ごとに人を入れ替えれば、同じ業務で派遣労働者を使い続けられる「使い勝手」のよい仕組みとなる。

 半面、26業務の撤廃など、労働者にとっては不利な内容だ。正社員から派遣への置き換えも進むだろう。政府は3年ごとの「転職」を促すことで、派遣労働者の待遇改善とキャリアアップにつながるというが、納得する労働者はいるだろうか。

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 改正案では、労働者が確実に「転職」できるよう派遣元に対し、3年働いた人を直接雇用するよう派遣先に依頼したり、次の派遣先を探したりするなどの雇用安定措置を義務づけるが、実効性には疑問符が付く。

 派遣先が必ずしも直接雇用するとは限らないし、3年未満で交代させれば、派遣元が次の就職先を探す義務がなくなるからだ。

 1985年に制定された労働者派遣法は、当初専門業種に限定されていたが、その後規制緩和によって対象が拡大し、最終的には製造業でも解禁された。

 ピーク時の2008年には200万人に達したが、リーマン・ショックによる景気の悪化で「派遣切り」が相次ぎ社会問題化した。厚労省の担当者が今回の改正案に関連して「派遣労働者はモノ扱いだった」と発言し物議を醸したが、派遣労働者の立場の弱さが透けて見えるようだ。

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 勤務地や勤務時間などを選べる派遣労働を否定はしないが、厚労省が13年に公表した調査結果では、派遣労働者の6割が今後の働き方として正社員を希望し、4割近くの人は「正社員として働きたいが、職が見つからなかった」と答えた。年収も300万円未満の人が最も多かった。

 長時間労働が懸念される「残業代ゼロ法案」といい、労働者派遣法改正案といい、安倍政権が進める労働政策は、財界寄りの姿勢が鮮明である。不安定な働き方をこれ以上拡大してはならない。