【松田良孝通信員】日本統治期に沖縄出身の漁民らも多数暮らしていた台湾東部の港町、台東県成功(チェンコン)鎮を舞台にしたドキュメンタリー映画「台湾万歳」(酒井充子(あつこ)監督)の公開が始まった。作品では、伊良部島佐良浜のウミンチュと漁に出た経験のある85歳の男性が、沖縄にも残るカジキ漁の歌を披露しており、海を挟んで結び付く沖縄と台湾の間柄をスクリーンから垣間見ることができる。

突きん棒漁に使うモリを手にする張旺仔さん。右は酒井充子監督=1日、台湾・台東県成功鎮

 スクリーンに登場する男性は張旺仔(ちょうおうし)さん(85)。1950年代の2年間、伊良部島佐良浜出身の「ヨシハマ」という人物が船長を務める漁船に乗っていた。漁船は「福源11号」といい、本紙のインタビューに「佐良浜に小さい港がありますでしょ? 私は向こうに入りましたよ」などと語った。

 成功鎮は日本統治期に新港と呼ばれ、32(昭和7)年に完成した港が現在も使われている。海を泳ぐカジキを船上からモリで突いて仕留める「突きん棒(つきんぼ)漁」でも知られ、作品では海上で撮影した映像を紹介。突きん棒漁は冬場に行われ、その様子を「今日は北風/突き船日和」という歌詞で表現した歌があり、張さんが映画の中で披露している。

 突きん棒漁はかつては沖縄でも行われ、この歌も歌われていたことがある。本作では、台湾のウミンチュの視点から沖縄との関係を感じ取ることができる。

 酒井監督(47)は2015年に取材で偶然、成功鎮を知った。「映画の中で特に沖縄をフィーチャーしている訳ではないが、(撮影を通じて)黒潮がつなぐ人の縁を感じた。台湾と沖縄の密な関係は、張さんが沖縄の人と一緒に船に乗っていたというところにも表れているのではないか」と語る。

 終戦直後の沖縄と台湾の間で行われた人やモノの移動について、沖縄と台湾の双方から調査している与那国島歴史文化交流資料館の小池康仁事務局長(政治学博士)は「終戦直後の沖縄と台湾について、人の移動を扱ったドキュメンタリーは少ないように思う。漁民は日常的に移動しているが、その姿を取り上げている点でも大変貴重ではないか」としている。

 上映は22日に都内のポレポレ東中野で始まり、沖縄では桜坂劇場で10月の公開を予定している。

 酒井監督は、日本語世代の台湾人を追ったドキュメンタリー映画の「台湾人生」(09年)や「台湾アイデンティティー」(13年)で知られる。